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目の前で燃え上がる大きな炎。
咄嗟に使ってしまい、目の前で怯える精霊にごめんねと謝り、水の魔法で辺り一面に雨を降らし消火する。

「大丈夫だった?」

『っ、だいじょ、です』

「なら良かった。ここら辺は魔物も多いから気を付けて」

落ちてしまった眼鏡をかけ直し、未だ座り込んでいる小学生程の大きさの精霊に手を伸ばすと、漸く落ち着いたのか朗らかに笑い手を掴んでくる。
やっぱり精霊は可愛いし人見知りの俺よりも、人間を警戒しているからか人見知りっぽくビクビクしてるからとてもいいと思う。
何が良いとはちゃんと言えないけど、とにかく自分より人見知りっぽい人を見ると逆に落ち着いてくるって言う法則なんですよ。

『本当にありがとうございました。何かお礼を』

「どういたしまして。お礼なんかいいよ、気を付けて帰ってね」

『・・・ちゅ』

俺の言葉に不満そうな精霊はふと、いい事思いついた、とでも言うように急に目を輝かせると背伸びをして頬にキスしてきた。

「え、なに?」

『貴方に加護を。そして何か願い事を思いついたら私の名前を三回呼んでください』

「君の名前は?」

『あ、失礼致しました!私はフィリアと申します、以後お見知りおきを。きっと叶えるのでちゃんと呼んで下さいね?』

「フィリア・・・可愛い名前だね。願い事思いつかなくても、呼んじゃダメ?」

『構いませんっ!えへへ、宜しくお願いしますね!』

可愛らしい笑顔に胸を鷲掴みされていると、近くでガサガサっと音がする。
服の裾を掴み震えるフィリアに、警戒しながら安全な場所へと移動した。

事の始まりは、森の中を散歩していた時だった。
そろそろ薄暗くなって魔物が活性化する時間帯の上、気づかぬうちに森の奥深くまで入り込んでいたので引き返そうとしたときであった。

劈く様な高い金切り声が響き渡り、びっくりして駆けつけるとあの精霊が、フィリアが魔物に襲われていたのだ。
無残にもスカートの裾が引き千切られていたのでカッとなって飛び出た時に眼鏡も落ちてしまったのだろう、衝動のままに魔法で攻撃をすると、辺りが炎で包まれていた。

そこで話を今現在に戻そう。
兎にも角にも助けたことにより、仲良くなったフィリアとお喋り中である。
元来話好きなので、聞き上手なフィリアに夢中になって話しかける。

「フィリアは可愛いなぁ」

『そ、そんなことありませんっ!・・・あの、一つ聞きたいことがあるのですが』

「うん、何?」

『貴方の中に今は風と地の力しか感じません。先程火の魔法を使っていましたよね?』

「・・・あー、うん、それなんだけど、ね」

歯切れの悪い俺に、慌てて謝るフィリアの頭を撫でてから口を開く。

俺は、全属性使える。
とはいっても俺が特別なのではなく、俺の一族が特別なのだ。

遡ること何千万年前、先祖が一人の女性と出会い結ばれた。
だが二人の間には子が恵まれず、困っていた先祖に女性は打ち明けた。
実は神様の娘で、たまたま人里へ遊びに来た時に先祖と出会い、惹かれてしまったので父である神には内緒でずっと人間界にいるのだと。
だがそれもばれていて、罰としてきっと子が出来ないのだと。

それを聞いた先祖は、神殿へ女性と一緒に行き何度も何度も呼びかけ、結婚を許してくれ、どうか子供をと願うと、神様は厳しい試練を与えた。
どんな内容かは家にある書物にも書いてないしで、わからないけど兎も角試練を無事クリアした先祖に神は、女性を生涯守らせるために力を与えたらしい。
それが地上では一人もいなかった全属性を使えることと、底なしの魔力だ。
その神からの恩恵は今でも俺らの血脈に受け継がれている、ということである。

『神が恩恵を与えた一族・・・素敵!』

「いやいや、試練に耐えた先祖が凄いんだよ」

『でも、何故今は二属性しか感じないのかしら?』

「あ、そうだ、その話をしなきゃ」

神から与えられた力を時の権力者に知られていざこざが起きたことによって、次代より恩恵のことは隠すことにした。
一族のみんなは様々な魔具で力を抑えているのだが、俺の場合は生まれつき目も悪いこともあり眼鏡に魔力制御と属性制御の魔石を埋め込んだもので力を制御している。
何故あの二つの属性だけを使えることにしてるかというと、単純に先祖が元々使えていた属性だからだ。

「じゃあ、俺そろそろ帰んなきゃ」

『そう、またね』

「うん。もう襲われない様に気を付けてね」

手を振る精霊の姿が見えなくなる。
早く帰ろうと自分も帰路につく。
と言っても面倒なので寮までテレポートで瞬間移動だ。
目の前が一瞬暗くなると、次の瞬間には自室だ。

あ、間違えて部屋の寝室にテレポートしてしまった、後で掃除しなきゃ。
土足で寝室とか、本当にへましたなぁ。

なんて考えてると電話が鳴り、和葉から夕食のお誘いが来た。
その後、一目散に和葉の部屋へ行った俺は手洗いうがいしろって怒られた。



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