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部屋に着くとすぐに風呂に入り、噛まれた場所を清潔な包帯でぐるぐる巻きにされる。
手首の辺りに噛みつかれたので出血量も多く、ちょっと怖かった。
普通に吸われただけならそこまででは無かったのだろうが、抵抗して動いたおかげで傷が深くなってしまったようなのだ。

「学校に居る時は体育とかどうしても邪魔になる時以外はきちんと宝具を付けてくれ」

「はい、ごめんなさい」

「力の強い吸血種は匂いに敏感なんだよ」

「今日身をもって体験いたしました・・・」

紅の膝の間に座って後ろから抱きしめられた状態で話している。
耳元で囁く声は心なしか焦燥感が感じられる。
本当に心配かけてしまったんだなぁと反省し、体勢を変え向かい合うようにした。

紅の目は少し細められ、一心に眼差しが突き刺さる。
痛いほどのソレなのにただ愛しさしか感じない理由なんて、相手が紅だからってだけだ。

「紅が助けに来てくれて本当に嬉しかった」

「少し遅くなったけど・・・まぁ、今後はお前ももっと警戒しろよ」

「うん。ありがと」

そっと近づいてくる顔に、俺は紅の首に手を回して目を瞑るだけ。
数秒後合わさる唇から伝わる確かな熱に、身体も精神も、ただただ紅を求める。

「はっ、こぅ・・・ん」

「・・・ん、愛してるよ」

合間の息継ぎの度に囁かれる睦言が擽ったくて、身を捩る。
別に擽られてる訳でもないし、腕は俺を捕まえておくためのもので腰と頭にしっかりと固定されているが、それだけだ。
それでもこんなむず痒い様な気分にさせられるなんて、もう紅に敵う気がしない。

脱がされる衣服に、この先の行為はもう分かりきっているのでそっと息を吐く。
そこで、今更ながらに気付いた。

「紅、ここソファー」

「別にいいだろ。まぁ勿論身体が痛いならやめるけど」

「そうゆうわけじゃないけど」

「なら何で駄目なんだよ」

ここはあくまでリビングだ。
理事長だってカイン先輩だって来るし、日常的に利用する場所である。
そんなところでするなんて、これからどんな顔して暮らして行けと言うのだ。

「思い、出しちゃう・・・」

あまりの恥ずかしさに顔を隠し、俯く。
キスを妨害されたとむすっとした声で呟く紅はもう知らないと言わんばかりに、性急に押し倒してきて腕を頭上で纏められる。

既に上半身は脱がされているうえにズボンのフロントホックは外されている。
なんだこの早業はと毎回思うのだが、これはただ単に慣れてるからなだけだと信じたい。
まぁ普通に過去の女性たち、もしくは男に嫉妬しているけど。

「っぅ、ん・・・んん」

唇を貪り合い、漸く離されたときには腰が抜けて力が入らない。
制服のネクタイを外している紅は様になりすぎて、もうどうしていいかわからない。
先程まで何かを嫌がっていたような気がするけど今となってはどうでもいい。

何でこんなにカッコイイのか、シアとか噂好きの女の子と一日中語り合っていられるほどに俺の旦那様はカッコイイ。

抱き込むように重なってくる紅は、項に齧り付くように歯を立ててきて、早々に血を吸われるのかと思い込めば、ただ歯形を付けられただけだ。
その後そっと歯型を舐められると、場所が項と言うこともあり擽ったい。

「はぁ、んっ、ぃ」

掌が下半身に触れ、唇は俺の胸元に移動する。
胸元の突起を優しく噛まれる感覚が何とも言えなくて、その刺激に耐えるために紅の頭を抱え込む。
それでも少しも快感は霧散してくれなくて、余計に感じてしまうのに抱えた頭を離すことなんてもう考えることも出来ない。

「腰上げろ・・・」

「ん、はっぁ」

ズボンは取り払われ、足首に引っかかる下着が気持ち悪いのだけど気にした様子のない紅は双丘の割れ目に手を伸ばす。
俺は足首の下着をちゃんと脱ぐのに一生懸命で、なんとか脱げたと喜んだ瞬間に指が侵入してきた。

ちゃんとしないと後でお互いに痛いのはわかっているものの、どうしても異物感は拭えなくて気持ち悪いし息も詰まる。
紅にキスされて息を吹き込まれると多少は楽になり、余裕が出てきたところで所謂前立腺、気持ち良い場所に触れられる。
わざとやってるんじゃないかと思ってしまうほどにタイミングが良くて、興奮のためか息が荒いもののまだ余裕たっぷりの紅が恨めしい。

「い、よ?紅・・・頂戴」

「・・・愛してるよ」

何回も聞いている言葉なのに、どうしようもなく嬉しくて、愛しくて、涙が滲む。
目尻にキスをして、腰を進める紅の灼熱が押し入ってくる。
圧迫感が苦しくて、痛くて、辛くて、どうしてもこの瞬間はみっともないとわかっていても泣いてしまうし、顔を紅の胸にすりつけキスを強請ってしまう。

男として恥ずかしいと思いながらも紅が相手ならいいかと最後に思ってしまうから、もうそれはそれでいいと言えるのだろうか。
なんて考えるけど、正しい答えは要らなくて、必要なのは紅だけだ。

「は、はぁ・・・透、大丈夫か?」

「っく、ぁ、ん、大丈夫」

「・・・もう、傷なんてつけられるなよ」

「わかってるよ」

「ほんと、心配した」

痛いほどの力で抱きしめてくる腕から伝わる何かの葛藤が、何故か涙を誘う。
心配させてしまった後悔と、簡単に捕まってしまった自分を責める気持ち、そして紅が自分を想ってくれる気持ちが嬉しくて、嬉しすぎて。

腕の力が緩んだ瞬間、勢いよく唇をぶつける。
歯が少し当たってしまったものの、これで思いが伝わるなら安いものだ。

言葉には、出来ない。
紅に対する思いを言葉にはしたくない。
だって、言葉にできるほど優しくもないし痛くもないし綺麗でもないし汚くもない。
なんて面倒なものだと思うけど、きっと愛ってこうゆうものだ。

深い口付けに、緩やかなものから激しいものに変わる抽挿に揺さぶられながら、ただ紅を抱きしめる腕の力を抜くことは無い。
そして、紅の温もりが伝わるその背に爪痕を付ける権利は絶対に譲らない。
そう思いながらただただ紅の熱に溺れた。

傷口に砂糖を塗り込んで
(薬なんかより貴方の熱を頂戴)




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