伸ばした先の 背後から抱きしめられる。 最近は梅雨の時期になったからか、湿気が多く蒸し暑い。 それでもじっとしているのは、温もりを感じていたいからなだけ。 今は母さんが一階に居るので多少甘い空気になれどその、過剰なスキンシップはない。 それでも心臓は常より早いリズムで一定に鼓動を奏で続けている。 そんな二人だけの空間に、ふいに侵入者が現れる。 扉をノックされた瞬間、慌てて先輩の腕の中から抜け出すが、それが物寂しい。 「あら?いちゃいちゃしてなかった・・・」 「母さん、どうしたの?」 「今から会社の人に会ってくるの」 「わかった」 「夕飯は、五十嵐君がよかったら一緒にどこか食べに行きなさい」 「はい、ぜひそうさせて貰いますねー」 先輩の返事を聞くと、急いでいたのかそそくさと部屋から出ていった。 急な仕事でも入ったのだろうか、そう言えば完全に二人っきりになったことに気付く。 慌てれば慌てるほど余計なことを思い出して、この前してから暫くたつなとか、後ろから抱きしめられた時の背後に感じる筋肉が凄かったなだとか頭に浮かんでしまう。 「時雨?こっちおいで」 「ぅ・・・はい」 「なにー、やだった?」 傷つくんだけどーという先輩にそんなことないですと、恐る恐る近づいていく。 脚の間に収まる体の小ささが恨めしいものの、全身で温もりを感じれることの喜び。 「・・・・・・・先輩、コレはわざとですか?」 「いやー、時雨可愛いなぁって思ったらさ」 背中、というより臀部に当たる硬いものは、きっとたぶん先輩のアレってやつで。 恥ずかしいと思いながらも、一か月はもうしてないことを思い出す。 さっきも暫くしてないのを思い出したり、自分は欲求不満なのかと悩んでしまう。 「ね、ダメ?」 「いーですよ・・・でも、その、優しくして下さいね」 「え、ほんとに?」 普段は了承するまでに結構時間がかかるので、珍しいなと先輩の声が言っている。 確かに普段は男としての欲求より羞恥が勝っているのでそうすぐにはいいよと言えない。 そりゃ一旦行為を始めてしまえばもちろん欲のほうが強くなるのだが。 早速と言わんばかりに服を脱がしにかかる先輩。 先輩は中途半端に脱がされた状態がお気に召しているようなので、Tシャツは首に引っかかっており、ズボンは膝ぐらいまで降ろされた。 もういっそのこと全部脱がしてくれと耳元で小さく訴えるとダメと言われる。 「っぅ・・・あ、あっ」 焦らされるように肌を滑る指先が、官能をより煽るくせにこれといった刺激は無い。 意地悪なのは性格だけでなくこんなところにまで出るなんて、本当に性悪だ。 時折触れる胸の飾りは、先輩に触れられ始めてからは快感を感じる器官の一つとされている最中で、まだそう感じるわけでもないが何かがわきでそうで。 それがきっと快感の芽が出始めていると言う証で、精神的に感じてしまう。 「ふぁ、ん・・・も、っと」 「ほんと可愛いねぇ。いただきまーす」 唇が素肌に落とされ、赤い花が散らされていくのを薄く開いた目で眺めながら、胸元で動く頭を抱き込むように掴んでしまう。 小さく笑った先輩は、そのまま突起に噛みつき、痛い、なんて感じる前に優しくねっとりと舐められてしまえば文句も言えずただ愛しさが込み上げるのだ。 もう片方の手が臀部を弄り、双丘の間に窄まるそこに指が触れる。 慣れない感覚はやはり辛くて、拭えない異物感が苦しくて、直接感じる熱が愛しくて。 先輩と色事をし始めてから常備されるようになったローションを潤滑剤に、侵入してくる感覚に眉を寄せるものの、暫くして指が増やされていくうちにはむず痒い様な、何とも言えない刺激が奥の方で燻り、先輩のものが欲しくて堪らなくなる。 久しぶりの情事に、興奮しているのは果たして俺だけか。 「せんぱ・・・お、ねが、ちょうだい?」 「ふ、いくよ?大丈夫だからね」 一気に侵入してくる熱の塊に、息が詰まるも収まり切ったと同時に更に膨張するソレ。 奥の気持ちいいところまで届いて、思わずというか小刻みに体が揺れる。 完全に無意識だった行動が、何故か先輩のツボにはまったらしく腰を掴まれて律動が始まる。 首に腕を巻き付け、キスをしながら奥を穿たれ、快感を五感全てから感じ取ってる。 体勢を変えたことにより、より深く繋がり嬌声が漏れる。 座ったような姿勢の先輩の上に向き合うように座る俺は、自然と先輩の肩に手を置き自分から腰を振ることに気付き、止めようと思うものの先輩の動きと合わさる様に動いてしまう。 きっとばれてないと思いながらも、謎の背徳感に包まれて快感が背筋をのぼる。 「もっと、先輩・・・あっぁ」 「う、ん!全部、あげるよ」 先輩もそろそろ限界が来ているのか、息があがっているのを朦朧とした意識で見上げる。 ああ、やっぱり好きだなぁって自覚しながら、先輩にしがみつきながら絶頂を迎えた。 奥を先輩のもので汚され、先輩の腹部に俺の出した白濁色の液がかかってしまう。 先輩の身体を強く抱きしめながら、やがて視界は黒で塗りつぶされた。 伸ばした先の (僕だけの温もりにしがみつく) しおり |