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次々と可愛らしく着飾った女の子たちが座り始め、やはり緊張してしまう。
だけど、その服から見える女性特有の柔らかそうな肌やしなやかに細くのびる指先が見え、自然と唇は弧を描く。

まだ完全にホモになったわけじゃなく、ただ八尋が特別だっただけなのだ。
だから彼さえ忘れてしまえば、俺は女の子を見て気分が高揚したり触れてみたいと言う欲求を持つ普通の男に元通りだ。

もう俺は大丈夫だと安心し、笑みを隠すために下げていた顔を上げると目の前に居た女性に思わず目を見開く。

「初めまして、緒方智花(おがたともか)です」

「・・・鷹見悠(たかみゆう)です、よろしく」

なんで、なんでこの人が。
大体緒方って名乗ってるってことはもう籍を入れたって事だろ?
ならなんでこんなとこに居る?

他の男達は、そんな俺なんかお構い無しに各々とりあえず目の前に座った女の子と話している。
動揺する内心とは別に、口からは冷静に自分の名前が言えていたことに驚いた。

その後、十分程話をして席を移動しようって提案してきた天城。
有難く提案にのったのだが、彼女は何故か俺の横に座っている。
ちなみに、今は男女交互になるように座っている状態だ。

「で、貴方は良い加減いつ八尋を諦めてくれるの?」

とりあえずこのような場で無言というのもおかしいと、口を開こうとした時、彼女が口を開く。
彼女の口からから八尋という名前が出て、諦めてと言われて最初に思ったのは、悔しいとか八尋が決めることだなどの負け惜しみではなく、ただ納得であった。

未練が無いわけじゃない。
ただ、何度も自分に言い聞かせたようにこれが普通だと思っただけだ。
本当に単純にお似合いだとも思った。

「この前、昨日別れるって言ってきました」

「あら?彼は私とずっと一緒にいたけど?」

「メールで済ませたんです」

「そう。なら良かったわ」

「・・・もう、籍はいれたんですか?」

「はっきり言った方が貴方にとってもいいわね」

勝者の微笑みを浮かべる彼女は、まるで女神の様に美しいけれど、俺にとっては悪魔のものにしか見えない。
だがここでは、八尋に選ばれなかった俺はただの敗者だ。

「何だか変な噂が流れているから、ちゃんと病院で調べたの」

「これは?」

無言で茶封筒を開けるように催促する彼女の言うとおりにそれを手に取る。
封を開くと一枚の書類が出てきて、何なんだと疑問を抱きながらも書類に目を通す。

DNA鑑定。
彼らの愛すべき小さな命と彼らがしっかりと血縁関係で結ばれていることを証明するその書類は、何回も現実をと言いきかせていたにも関わらず、再び奈落の底へと突き落すには十分なものだった。
智尋と名付けられていた小さな可愛らしい子供は、確かに二人の愛の結晶であり、男である俺では決して与えられないもので。

「貴女達の邪魔なんてしませんよ」

「その様子だとそうね。でも、私と彼の邪魔をする人は徹底的に排除しなきゃ」

「・・・満足しましたか。今、俺はもう彼の居ない道を歩き始めてますよ」

「私の方がお邪魔だったみたいね。ごめんなさい」

「お幸せに」

「ありがとう。貴方も良い出会いがあるといいわね」

書類は貴方が持っててと言われたので、何も言わずにそれを受け取る。
彼女は不自然にならない様に一時間程居ると急用ができたと言って去って行った。

俺は彼女が去った後もその場に暫く残ったけれど、三十分ほどで我慢できずにその場から逃げるように立ち去る。
彼女が居なくなったことで男一人が余っていたのであまり何も言われずに抜け出せた。

まだ人も多い道で、俺は一筋涙を流したのであった。


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