仲良きことは美しきかな

「シアー、早く行くぞー」

「すいません!ほら、正樹行きますよ」

「ほいほーい」

今日は正樹などがいい加減紅様に会ってみたいと言うのでカイン様や理事長を巻き込んでお二人の部屋で小さなパーティーと言うか顔合わせの日です。
紅様も透の友人は花嫁などの事情を知っているので一回会ってみたいと言っていたので、それはすんなりと決まったのです。

翠は早めに料理を作るために透の部屋へ行ったので、寂しくなったらしい詩葵が時間が近づくとそわそわして、早く行こうと声をかけてきたので今は向かっている最中。
正樹はまるでピクニックでも行くようにスキップしているので少し笑ってしまいました。

「ここですよ」

「うぉーここに王様が居るのかっ!!」

「なんか、緊張するな・・・」

「紅様はお優しい方ですよ、翠も待っているでしょうから早くしましょう」

「翠っ!!」

「はーい、そのだらしない顔締めてーっ!」

少しふざけながらもノックすると透が出てきて、リビングへ進むと黒羽の方々や理事長、カイン様も居て少し緊張しますね。
ご挨拶を終わらせると、良い旦那様と言うべきか、テーブルにお皿を持っていく作業を紅様と詩葵が率先して行っています。
思えばこのお部屋で食事を頂くのは初めてなので普段どんな夫婦生活をしているのか全く知らないのです。

「紅、ワイン選んできて。カイン先輩とかも飲むだろうし2本ぐらい」

「わかった」

翠と詩葵でも思ったのですが、何と言うか距離が近いのは気のせいではないでしょう。
耳元で囁きあっているようでなんだか見てはいけないものを見たような気分です。

そうして僕らも少しだけでもお手伝いをして、テーブルに料理や飲み物が行き渡って少し恥ずかしそうに召し上がれと言う透はなんだか可愛かったです。
普段は結構クールで落ち着いているので、紅様の密着具合や周りの視線に少し落ち着きを無くしている姿は小さな笑みを誘うものでした。

「うん、やっぱり透君の料理はおいしいね。翠君も料理が上手だ」

「そだねー翠くんすごいね、見た目も綺麗だし」

確かに透は料理の見た目や盛り付けにはそんなにこだわっていないのだが、翠はとても綺麗に盛り付けるなぁって、気づいたカイン様は凄いと思います。
そしてそんなカイン先輩を無意識にでしょうが睨めつける詩葵は、ある意味凄いです。

「コレは透が作ったんだろ」

「紅、なんでわかったの?」

「毎日食ってんだ、すぐわかる」

「・・・そっか」

こちらを他所に完全に二人の世界を作り上げている紅様と透に目をぱちぱちしてしまった僕と同じ心境であるのか、苦笑している理事長。
僕も今、きっと理事長みたいに苦笑してるんでしょうね。

「紅・・・」

「透、」

「こーう、それは今やっちゃいけないよー」

少しぼんやりしている間に、どうやらここでキスしようとしていた紅様を叱るカイン様と気まずそうにしている透。
先程のキスしそうな瞬間、ぼんやりとはいえそちらを見ていた者として恥ずかしいです。

そして、カイン様や理事長とも少し緊張しながらでしたがお話しすることが出来た有意義な食事会も終わりとなってしまいました。

あのお二人と正樹は早々に帰られて、翠と共に後片付けのお手伝い。
何やら詩葵と紅様はお話をしているのですが、その内容は所謂嫁自慢と言うやつです。
二人の顔を見れば仄かに顔が赤く、その様子をチラチラと伺ってはまた自慢を始めるお二人はどうやらとても仲が良くなったみたいです。

透がお手洗いの方に行くと、紅様も追っかけて行って、興味本位で僕もそっとついていってしまいましたが何やら会話が妖しいです。

「んっ、ちょっと紅!」

「誰も居ねーよ、口開けろ」

控えめな水音がして、そのいやらしい雰囲気に顔に少し熱が集まってきました。
やっぱり興味本位で覗くと痛い目見るなと反省し、踵を返すとまた会話を始めていて思わず聞き耳を立ててしまいます。

「後で!ベッドでなら・・・いいから」

「言ったな?」

「男に二言はない!」

「愛してるよ、透」

「俺も、だし」

紅様は、透にとても甘い。
見たことの無い様な顔で、聞いたことの無い様な声で、甘い言葉を透に与えていく姿は正しく未知のモノであると言っていいでしょう。

透は、紅様にとても甘い。
普段と違う顔で、いつもお弁当を一緒に食べている皆でさえ聞いたことない声で、彼が絶対に言わなさそうな言葉を紡いでいくのです。

二人には相思相愛という言葉がお似合いで、二人の幸せを見ると僕も嬉しくなります。

これ以上覗き見するのは恥ずかしすぎるので、もう戻りましょう。


仲良きことは美しきかな
(でも仲が良すぎて見てられません)



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