1 身体が怠い。 喉が痛い頭も痛い呼吸がし辛い。 ここまで風邪症状が出ていて気づかない親はいったいなんぞや。 とまぁ突っ込みたいところは沢山あるが、現在熱の所為でぶっ倒れてしまい、俺は保健室へと何時の間にやら運び込まれていた。 朝から声が掠れていて、足取りも覚束なかったものの両親と共々今日は早く行かねばならなかったらしく、母に乱暴に起こされてぼーっとしているうちに二人は出かけて行った。 ちなみに母親は関西の方に出張らしく二日ほど家に居ないらしい。 「・・・・俺、死にますかね」 「どうしたの天宮君、でもインフルだったら死ぬかもね」 「先生、怖いです」 教室で寝てたと思ったら何時の間にか保健室で、結構ガチでビビったのは秘密だ。 どうやら最初は本当に寝ていたらしいのだが、先生が起こそうと体を揺さぶった結果一瞬体は動いたのだがそのまま崩れ落ちてしまったらしい。 その先生のおかげで頭は打たずに済んだのだが、如何せん何の授業だったか忘れた。 まず最初から起きていなかったし。 「あ、ちなみに五十嵐君にはバレてないから大丈夫だよ」 「そりゃ良かったです。・・・帰ります」 「お母さんもお仕事してるんだっけ?迎えに来れる人は?」 「あー・・・母は出張で父は最近朝も早くて帰りも遅い感じです」 「要するに居ないってことね。じゃあ斉川先生にでもお願いしようかな」 今忙しいならついでに病院も斉川先生に連れて行って貰いなよと言われて、まぁ確かにインフルかどうかの検査は受けときたいからと頷く。 たったそれだけの動作でも頭が痛くて思わずこめかみを押さえると笑われた。 もしかしたら佐藤先生は他人の痛がる姿を見たいがために保険医になったのだろうか? なんて思ってしまうぐらいには性質の悪そうな笑い顔をしている。 「でも今3時間目が終わる頃ですよ、授業があるんじゃないですか?」 「4、5時間目は授業入ってないし昼休みもある。さっさと行くぞ」 「あ・・・」 佐藤先生に質問したが、返ってきた声はまた別人で目を瞬かせる。 それと同時に閉められていたカーテンが開けられて俺の鞄を持った斉川先生が居た。 「おい佐藤、俺はコイツ連れてくから車出しといてくれよ」 「わかりました。丁寧に扱って下さいよ、結構な高熱ですから」 佐藤先生に車のキーと俺の鞄を手渡すと斉川先生は俺を起こしてくれた。 そのまま皺にならぬようにとハンガーに掛けられていたブレザーを羽織らせてくれる。 後は立ち上がって歩く、それをしなければならないのだが折角差し出してくれた手を頼りに立ち上がろうとしても脚に力が入らない。 「おい、おんぶしてやるから」 「いえ・・・大丈夫ですよ、立てますから」 「無理に決まってんだろ、ほら」 そう言って先程まで差し出されていた手を引っ込めると俺に背を向け屈む。 申し訳ないと思いながらも確かにこのままでは埒が明かないとその肩に手をかける。 浮上する体に、一瞬びくりとしたがすぐに落ちない様にとしっかり掴まる。 その後車の傍で待っていた佐藤先生にお礼を言い車に乗り込むと斉川先生の運転で車が出発し、病院へと向かう。 気分が悪くならない様にゆっくりと安全運転してくれたので安心してその移動中も寝ることが出来た。 病院に着くと先生が手続やらなんやらしてくれたので俺は医者に触診やら問診を受けてその後は病院が貸してくれた毛布に包まれながらその結果を待っていた。 良かったことにインフルエンザやなんか怖い病気でもなく、普通の風邪だが熱が高いので暫くは安静にと解熱剤やら喉の薬など貰ってようやく病院を後にする。 そのままなんとか保たれた意識のまま家までの道案内を済ませるとベッドまで運んでもらってようやく一息つけた。 まあそれも息絶え絶えだったので斉川先生も相当心配そうにしていたので何かいろいろ言われたが何を言っていたかわからなかった。 そして斉川先生も帰るととりあえず俺はそのまま目を閉じた。 しおり |