はいはい、

炒めた野菜と魚介類に軽く味をつけてパスタを絡める。
お腹が空いたと騒ぐ弟の友人に食べさせるために急がなきゃ。
ちなみに男子高校生だから、なんて根拠のない自信で大盛りよ。

30分程前、お昼の休憩中に突然現れた弟と昶くん。
家が近いために散歩してた弘毅とマンションから出た昶くんが偶然にも会ったらしいわ。
昶くんは外で食べようとしてたので、私のとこに行けばいい、みたいなことを弘毅が言ったらしく、結果ここに来たみたい。

来た途端に腹減ったと叫び出す昶くんに若干驚きながらも、弟と仲良くしてくれてる子なのでお姉ちゃん頑張ったわ。
でも食材が無くなったのもあるし後で買い出しお願いしましょ。

そんなこんなで今現在、二人は足りないかも、なんて心配してしまう程に美味しそうに食べてくれている。
それにしても凄いスピード。
ってあらあら昶くんたら野菜こぼしてるわ。

「昶く、」

「おい、飛ばすな」

「わ、ごめんなさい朱音さん!」

「いいわよ別に」

私が指摘する前に弘毅が言い、昶くんの頬っぺたを人差し指でつつく。
弘毅ったらこんなことする子だったかしら?
しかも弘毅がテーブルを拭き始める。
この子こんなに世話する子じゃなかった気がするのに。

そろそろ空になるお皿を眺める。
デザートでも作ろうかな、と呟くと昶くんの目がキラキラしだして、やだこの子可愛い。

立ち上がり奥の厨房へと篭って何を作るか考える。
簡単にパンケーキにアイスをそえるのでいいわね。

準備をしながら奥から二人を見てると、昶くんからの多いスキンシップ。
それを苦笑しながらも楽しげにしてる弘毅は時々頭を乱暴に撫で回す。
昶くんは猛獣使いか何かかしら、なんて思いながら荒れていた頃の弘毅を思い出す。

異質を嫌う冷たい瞳の数々。
今では露骨に嫌な顔をしてきたり見目だけで差別などはあまり無いとはいえ、何度も顔を見られたりするのは変わらない。
それは弘毅も沢山経験してきただろうし、身体と反対にまだ育ちきってなかった心では大きなストレスになったと思う。
暴力という形で発散する様になったのは少し悲しかったけど、それ以上に心が壊れなかった方が嬉しかった。

過去を思い出すだなんて、どうしたのかしら。
でも、それぐらい弘毅と昶くんが出会ってくれたのが嬉しくて。

たからと言ってお姉ちゃんを忘れてあんなにいちゃいちゃするのはどうかしら?
ふざけながら抱きつく昶くんを引き剥がす弘毅だけど、なによあの顔デレデレしちゃって。
思わず材料を混ぜるゴムベラに力が入ってしまったわ。

「もーやっぱ東雲イケメンだなぁ」

「今のどこからそうなったんだよ」

あのスキンシップは落ち着いて、今度は普通に雑談してたみたいだけど、お姉ちゃんもどこからイケメンと思ったか聞きたいわ。
なんなの、身内の欲目とか言うけどそんなノリなの昶くん?

バターを敷いたフライパンで生地を焼いて、出来たそれにそれぞれチョコとバニラのアイスを乗せる。
なんだかあの空気のあの場所に行くのは嫌ねぇ。

それでも熱いパンケーキに乗せられたアイスはどんどん溶けていってしまうのでわざと大きな声を出して持っていく。

「お待たせ〜」

「美味しそー!流石朱音さん、美人とパンケーキって最高だね!!」

急に写真撮られたわ。
そうだ、昶くんは写真が凄く大好きみたいなんだけど、いきなりはびっくり!

それでも楽しげな昶くんを見ると何もいえなくなって、ただ召し上がれ、と言った。

最初は普通に食べてた昶くんだけど、食べる弘毅の写真を撮り始めた。
そんな時、なんというか二人の空間が出来始めてちょっとだけ感じる居心地の悪さ。

それがやっと終わって密かに安堵の息を吐く。
その後、そんな私を嘲笑うようにあ〜んを始めた二人を私はどうすればいいのかしら?

はいはい、
(ごちそうさまです)


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