花月夜

ふいに見上げた空を見て、思ったのだ。

イケメンと花火、浴衣姿のイケメン。
あ、だめだ鼻血が。


とゆうわけで行動力こそ俺のいい所!

「ハーイ、今日も元気な昶くんでーす!」

『・・・おう、どうした』

「8月2日にあるお祭りに行きましょう」

『・・・』

「浴衣を着てください」

『・・・』

「お願い!!イケメンーーー!!」

『・・・わかった』

事前に場所とか曜日とか調べてた俺に死角ないぜっ!
それからはとんとん拍子に話が進んでいって。
最後に浴衣を持ってない東雲と今度買い物の約束をして電話を切った。

そのまま俺は喜びのあまり既に帰宅していた父上に抱き付いてしまった!
そしてお祭りのことを嬉々として語ったらなんと俺も浴衣を買うことになり更に騒いで頭を叩かれたのは余談だ。

俺も久しぶりに浴衣着たいし東雲の横で恥ずかしい恰好なんて出来ないからね!
とゆうわけでお父さんに小遣いも貰えたし、週末のお買い物が楽しみだ!!


そうして訪れたお買い物の日。
鮮やかな色合いのものから黒をベースとした大人っぽいものまでいっぱい。
ああ白いのや灰色のものもいいけど、紺色も捨てがたい。

てか縦縞もシンプルでいいけど波みたいな柄のも、市松もカッコいい。
どれにするか、どれが東雲に一番似合うか。

「お前悩みすぎ」

「東雲がカッコいいのが悪い!全部似合いそう」

最終的に売り場のお姉さんにもアドバイスしてもらって紺色の市松柄の浴衣にダークグレーの帯にした。
残念ながら俺に浴衣の知識や服のセンスはないので結構王道な感じになったけど、まぁカッコいいからよし!

次に俺なんだけど、なんと、俺のは東雲に選んでもらった!!!
ちなみに刺子縞の薄い灰色の浴衣に黒の帯だ。
ああ、今日は凄いいい日だ!

その日は買い物が終わるとすぐ別れ、それから毎日東雲の浴衣姿に想いを馳せながら過ごした。

そして!ついに!
うおっしゃー、カメラの準備は万端だ!
着付けはお父さんにしてもらって、カメラと財布を装備すれば今日の俺最強!

薄暗くなった街の中、マンションの入り口前で待っていたら、イケメン登場!

「待たせたな」

「んーん。へへ、カッコいい」

思わずにやけたままカメラのシャッターを切れば気恥ずかしげにしながらもそのまんま。
もう、なんやかんやで撮らせてくれる東雲イケメン!性格までイケメン!

履きなれない下駄だけど、近くの河川なのですぐにつき、屋台を物色し始める。

まずはたこ焼き、とうもろこし、それからそれから。
男子高校生の胃袋をなめちゃいけないぞー!とゆうことでひたすら食べまくったよ。
でももちろん食べてる東雲も撮ったけどね!!

そんでね、やっぱりイケメンなんだよ!
俺なんて視界に入ってないらしく、話してても綺麗なお姉さんに急に割り込まれたり。
あとね、貢物?も凄かった。
いろいろ食べたけど半分ぐらいは年上のお姉様方に買ってもらった。

でもね、でもね、聞いてくれよ皆の衆!
なんか面白くなくて裾を引っ張ったらすぐに話しかけてる人を無視してくれるの。
最初から誘われても断ってくれるし、うおー最高だー!

あとね、拗ねてたらりんご飴買ってくれた。
しかも写真も、って強請ったら大体俺がお願いする通りにポーズとってくれるの。

俺、今日このまま死んでも悔いはない。
本気でそう思いかけたけど、そんなところで今日のメインの花火が始まる。
開始の少し前に人気が少なくて綺麗に見える場所に移動してたので特等席だ!

一発目の花火が打ちあがったところで東雲から感嘆の声が上がる。

「本当に綺麗に見えるな」

「今日が楽しみすぎたから全力でこの場所探したんだよ!」

「っ、そうか」

笑いながら、でも褒めてくれてるのか頭を撫でてくれたぞ。
うわ、なんだこれ恥ずかしい!

暫く俺も花火を見ていたけれど、やっぱ俺の主食は東雲ですので撮影会スタート!
あくまでも自然体のままがいいのと空もいれたいから、少し離れた場所で撮っていく。

そうしてタイミングよく撮れた数枚の写真を確認して、最後に正面から撮りたいのでこちらを向くように頼む。
思いの外花火に夢中だった東雲には申し訳ないのでちゃんと一回できちんと撮るぞ!オー!

そして、緩く笑った東雲と大輪の花、少しだけ風に揺られた浴衣の裾。
最高に綺麗なその一瞬を閉じ込めて、その完璧な世界の余韻に浸りながら顔を上げた。

「ほら、こっち来いよ」

「うんっ!」

やがて最後の花火の花弁が散り散りになって、闇夜を照らすものが月だけになった。
あの後花火が終わるまで互いに無言で、周りにも人が居ないので凄い静かな時間だった。

闇の静けさと月の白い光の美しいけれど少し恐怖を感じさせるこの空間で、だけど東雲と一緒。
それを思い出し、またいろいろとはなしかけまくる。

「ね、ね、今度はさ、」

「はいはい、わかった!何処でも行ってやるから、な?」

ああもう、東雲大好き。

花月夜
(なにより綺麗な君と一緒に)


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