ほんとはね

※本編「 すこしだけ」のお兄ちゃん視点

家に帰ると久しぶりに弟が玄関まで迎えに来た、と思った。
それを、むず痒いと思いながらも嬉しく思ったのだ。

しかし、現実はなんだコンチクショー。
そんな心の内は隠したまま、東雲と叫んだり天使やら魔王やら言う弟の背を見送った。

一息吐きながら、来客があるようなので単純な興味と共にリビングへと向かう。
そしてソファーにちょこんと座ってる、体格はそこそこ良いもののあまり筋肉の付いていない少年だった。
身長だけが伸びたパターンかと、高校時代に運動部に入っていたせいで無意識に考えてしまう。

だが今は身体に篭った熱やクラクラする頭を冷やしたい。
一瞬見ただけで、すぐに冷蔵庫の中を探す。
アイスクリームが欲しい、でも先に水飲んだほうがいいな。
しかし残念なことにアイスクリームが見つからず、仕方なく水でを飲む。

すると、昶と話をしてた少年が俺に気づいて挨拶してきた。
昶とどんな関係かは知らないが、とりあえず兄として印象が良いほうがいいだろう。
そんで冗談で身長の話をすると昶はわかりやすく怒った。

てか、普段の俺を見ている昶にとっては気持ち悪いらしくて引かれてるな、コレは。
苦笑いしたい気分になるのだが、弘汰くんと適当に話をしていると、笑い顔が年相応で可愛いなぁと思った。
昔は昶も可愛かったんだけどな、なんでこうなったのやら。

大学の話したり、昔やってたスポーツの話をしてやると表情がコロコロと変わっていった。
それがなんだか楽しくて、ずっと話していたら昶は拗ねてるらしい。
その様子が面白くて、ふいに笑ってしまう。
不思議そうな顔をした弘汰くんになんでもないと言って、また話をした。

そうこうしていると、昶お気に入りの東雲くんとやらがきた。
わかりやすく笑顔になる昶と弘汰くん。
若干だが下がっていく気分。
でも、まぁ仕方ないか。

と、ここで下がるわけがないだろう。
東雲くんと挨拶を交わしてから、外は暑いし暫く家にいたらと言って引き止める。
そうして、その後は弘汰くんと距離を縮めて話す。
わかりやすくこちらを見てきた東雲くんに口角があがる。

「楽しそう、ですね」

「そう?ねえ、お兄ちゃん好き?」

「すっ、きです」

照れて、東雲くんの方を向かないようにするので俺も東雲くんから見えないようにする。
あ、なんか東雲くんの顔が歪んでる、面白い。
そんな中、昶の顔も不機嫌になっていったのが気になる。

東雲に相手にされなくてしょげてるのかなぁ、と思ったら余計楽しくなってきた。

「あ、でも清さんも昶さんのこと好きでしょう?」

「え、そんなこたぁーねぇ」

優しい口調を心掛けていたのだが、ふいに問われて素がでてしまう。
どこからそう見えたのか。

「そうですか?でも、昶さんは清さんのこと好きですよね」

「そう、見える?」

なんだおい、そうなのか。

こんな話をしているからか自然と近くなる距離。
耳に口を近づけて喋りあっていた。

「あ、なぁ。じゃあ俺のこと好き?」

「好きです!お兄ちゃんがもう一人できたみたいです」

素直で可愛いなぁ。
こんな弟欲しかった。
と思っていたところで、こちらを睨むように見てくる昶に気づく。

でもまぁ、やっぱこっちが一番だな。

ほんとはね
(こっちだって嫉妬した)

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