お触り禁止

心底不思議な文化祭。
何故出し物で女装喫茶をしようと思ったんだ。

料理が出来るのでそれにかこつけてウェイター組から外れようと思ったら、なんと食中毒とかの対策で料理は外部で作られるらしい。
いやもうそれ女装したい変態の集まりになってしまうだろ!

そんな俺の悲しみは誰にも届かず、男子校のノリか何かで決定事項となっていた。
ちなみに俺は脚を隠したいとひたすらに訴えたおかげでロングなスカートの衣装だ。
まぁスカートな時点で辛いが、まだましだと心を落ち着ける。

そしてついに当日。
一度は試着したそれを着て、あんまりにも酷いとため息を吐く。

シフトが一緒のシアは可愛すぎるから余計に辛い。
いや、正直似合うのも微妙な心になる気はするけど。

「そろそろ開店ですよ」

「うん、行こっか」

最後にレースのついたカチューシャを付ければ、メイドさんの完成だ。
自分で言っててむなしい、胃が痛いぜ。

というか警備の都合とやらで黒羽さんも来るらしいのがマジ死にたくなる。
普段仮面をつけているから素顔など知りもしないが、こんな姿をお見せするとは心底心苦しい。

胃が痛い心境とは裏腹に、ふざけて入ってくる客が多いので案外繁盛している。
売り上げが高いと表彰され何らかの景品が貰えるらしいので、その為に我慢だ我慢。

それからやっと、やっと本日の俺のシフトは終わりを迎えた。
さっさと服を脱いでシアと回ろうと思ったのに、シアが可愛すぎるからそのまま宣伝して来いと。
そして、お前も一緒ならそのままでいいんじゃね?という言葉。

そのお言葉により、只今の状況を説明しよう。
メイド姿のまま「女装喫茶ご案内中」と書かれた段ボールがビニールテープにつるされ首にかけられている。

「………」

「透、そんな死んだ目しないで下さい!ほら、焼きそばでも食べますか!?」

「…うん。ありがとう。でもシアのが危ないから俺行ってくるよ」

あんまりにも死んだ目をする俺に、シアがなんとか盛り上げようとしてくてる。
だが焼きそば屋が半被を来たガチムチな男の集まりなので絶対に近づけたくない。

人通りの多いところで待ってて貰い、屋台まで行くのだけどいかんせん人が多い。
頑張って避けるが履き慣れないスカートなのでつっかかってしまう。
転ぶと思った瞬間、背の高い人が居たのでその人の背中に顔面からぶつかりなんとか姿勢を立て直す。

「…透?」

「紅!」

「…その恰好は?」

あ。

旦那様に醜いものみせちまったと、冷や汗がどっと出てくる。
脳内パニックなのに、紅が腕を引いて人気の少ないとこに連れ出すから余計に慌てる。

「随分と可愛い格好だな」

「いやいや、似合わなすぎだよ」

紅は目がおかしくなったのかと必死で訂正すれば、何故か目を細め壁に追い込まれ、壁ドンされてる俺!
しかも覆いかぶさるように体を丸めてくるので縮こまれば、お尻触ってきやがった。

「ちょっと何ふざけてんだよ!」

「可愛い。クラシカルなのがまた乙なものだな」

掌がお尻から腰を何度も行き来して、なんか変な気分になりそう。
調子に乗った紅がスカートを捲り上げようとして、更にはキスをするためか顔が更に近づいてきて。
咄嗟に目をつぶってしまったら、

「透!無事ですか…っ!!」

「「………」」

「し、失礼いたしました!!」

いつまでたっても帰ってこないシアが探しに来てくれた。
と言ってもそんな時間たってないけど、黒羽さんの捜査能力高すぎ。

不満げな紅を横目に、バクバク鳴る心臓を落ち着ける。
ああシアになんてものを見せてしまったんだ!

「透。今度実家のメイド服きてくれ」

「…紅?」

「これと似たクラシカルなロングタイプだ。絶対似合う」

こんな変態臭い紅初めてで、対処に困る。
仕方ないからとりあえず頭を小突いてやった。

お触り禁止
ここじゃ駄目よ旦那様

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