1

山奥に荘厳とそびえ立つのは白亜の城ではなくむさ苦しい男の巣窟である男子校。
地方にあるその学校は見た目の割には学費も安く高度な学習を受けられるので教育熱心な多くの親が子供をそこに押し込めていった。
その結果よくあることかは知らないけれどゲイやらバイが増殖していった。
そんな馴染みない単語が入った話されて斎藤祐太―さいとう ゆうた―は数回瞬きをする。

祐太は今朝方学園につき荷物を運んでくれた業者さんを見送りにロビーにまで降りて行った。
そこで部屋に戻ろうと踵を返した瞬間に変な女子よりも可愛い男が視界に入る。
誰だろうととりあえず挨拶をすると新入生の子かなと言われこの学校の特色を教えて貰った。

「え、じゃあ先輩大丈夫なの!?・・・なんですか!?」
「大丈夫だよ。でも、君は純粋培養みたいだから気をつけたほうがいいよ」

意味が分からず首を傾げもう一度尋ねたところで先輩にあたる男は笑って去って行った。
よくわからなかったけれどとりあえず荷物を片付けようとエレベーターに向かい「閉」ボタンを押す直前に大きな足音が聞こえ顔を上げるとそこには―――イケメンがいた。

「うわ、かっこいい!!」

思わず大きな声で叫ぶとイケメンは少しキョトンとした顔をして歩みを緩めた。
だがすぐに祐太のいるところに、エレベーターに向け走ってくる。
さっきの大きな足音はこのイケメンから発せられていたのか、そしてエレベーターに乗りたかったのかと理解して「開」ボタンを押した。
ロビーのラウンジは無駄に広く、玄関からは結構遠いのだ。
その長い足であっという間に小さな箱の中に入ってきたので深呼吸をする男を横目に部屋のある階を押して「閉」ボタンを押した。
声も低く長身でイケメンなんてずるいなと祐太は口に出していったけれど返事は帰ってこない。

「何階?」
「・・・五階」
「一緒ってことは、新入生!?」

すぐにエレベーターは音を立てて止まり目的の部屋まで歩みを進めていく二人の方向は同じである。
これはもしかしてという思いが祐太の心の中を覆い尽くし、足を止めた場所は二人一緒だった。
同室ということはクラスも同じことになるので素直にその言葉を口にすると大きな手が祐太の頭の上に置かれ、ポンポンと撫でられる。
年下に対する行動のようにも思えるけど心地が良くて頭半分ぐらい高い位置にある相手の顔を見つめて二カッと笑う祐太に未だに名前を知らないことを思い出す。

「お前名前はー?」

最初は不愛想な奴だなと思っていたけれどさっき頭を撫でられていいやつだと思ったけどやっぱり不愛想な奴だ。
名前ぐらいどうせ絶対に知ることになるのだから教えてくれてもいいのに。
既に部屋の中に入り靴を脱いでる男の背中を少し睨みながらなんか反応してくれないかと眺めるけれどすぐに個室に入って行ってしまった。
俺も個室に入り荷物を片付け始めた。




[ 1/3 ]

[*prev] [next#]
[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -