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帰りたい、そんな声を幾度もかけたけど先輩は無視し定番?のデートコースに俺を連れていく。
最初はすでに時間がお昼だったこともありランチを食べ、可愛らしい小物屋さんに行ってお揃いのネックレスを買ったりその後ケーキ屋さんに行ったり。
楽しくないというのは嘘になるけれどお金とかいろいろ先輩に出してもらっているので少し心苦しいというか一応こっちだって男なわけだしという変なプライドがあるというか。
いくら今女の子の格好をしていたって性別まで変わったというわけじゃないのだ。

「そろそろこの後映画観に行ってー、それからゲーセンに寄っていこっか」
「はい」

先輩から勧められた感動小説。
恋愛要素が強めなこれは幅広い年代に人気らしい。
俺も恋愛小説の勉強にすごくなって今じゃこの人の他の小説も自分で買うぐらいになっていた。
それが今回映画化になったというので是非とも見てみようということになったのだった。


ストーリーがわかっていたとはいえ実写版のそれは人気女優と俳優が主演でなんていうか・・・きらきらしていた。
俺の小説も一度映画になったことがあるがサスペンスだったので無駄にリアルで怖かったのしか覚えていない。

お気に入りのシーンが映画ではカットされていて少し不満だがまあ仕方がない。
とにかくこのデートをさっさと終わらせようと思うけれど終わりが近づくと終わりたくないと思う人間の矛盾をいったいどれだけの人が思ってしまっているのだろうか。

「じゃーゲーセン行こー。この近くに大きなとこあるからさー」

そしてまた繋がれる手。
ヒールの高い靴と足の長さの違いによってずれる筈の速度は先輩の気遣いの賜物により隣を歩くことができている。
所々でカフェや公園で休憩を挟んでくれたので慣れないヒールで足を痛めることもなかった。
どこまで無駄なハイスペック野郎なんだと思ったけどそのおかげで今回は助かってるので何も言えない。
そんなことをつらつら考えていると何時の間にやらゲーセンにつきプリクラコーナーに行く。

「最近のプリクラはいろんな種類がありますね」
「そだねー。目が怖いぐらい大きくなるやつもあるしねぇ」
「この前クラスの女子のを見たんですけど別人かと思いました」
「服の違いもあるとは思うけどー肌もめっちゃ白くなるやつもあるよねー」

こんなとこでフラフラしていても仕方がないのでとりあえず一番手前のが空いていたのでそこに入る。
なんか選択ボタンやらが出てきて焦ったけど先輩がフレームやら選んでくれたのでよかった。
戸惑う暇もなく撮影が開始され膝の上に乗せられたり後ろから抱きしめられたりしながら一回目の撮影を終えた。そう、一回目のだ。
これで終わりだと万歳しようとした俺に先輩は次はこれねーとさわやかに笑ったのだ。

そして渋々とついていき明るさを選びながら話す先輩に適当に返事をする。
経験上先輩に反抗しても笑って躱されるだけなのでとりあえず従っておいたほうが楽なのだ。

「次はーカップルコースのにしといたから、チューしようねー」
「はい」

ん?なんか変なこと言われた気もするけどカメラを見てねと音声がなったので慌てて正面を向いた。
すると何を血迷ったのかは知らないけど先輩が俺の手を掴み手の甲に唇を押し当てた。
びっくりして振り返るけど次だよ、といわれてどうしようかと軽くパニック状態に陥る。
その後も後ろから抱きしめられ頬にキスをされたり首筋にキスされたりでもう本当にいろいろ危なかった。主に先輩の無駄な色気的な意味で。
流されるわけもないけど同性でもその気にさせられる笑みでノックアウト・・・なんてされてないし。されるわけないじゃん。
最後の一枚になってようやくこれで終わりだと、ポーズを決めてねという音声を聞きながら突っ立っていると先輩に肩を掴まれて唇を己のそれに重ねられる。
遠くのほうでカシャッとなんだか間抜けな音がきこえて呆然としていると先輩がそっと唇を離して落書きコーナーに行こうという。

「・・・・せんぱ、」
「二回目のは時雨が持っててね」
「っ!いやです!!」
「ダメだよー時雨が持ってるのー。今日のこと、何回でも思い出せるように・・・ね?」

意地の悪い笑顔とともに機械からプリントされたそれがでてきて先輩がとって俺に渡す。
受け取りたくないけど耳元でこれをみんなに見せちゃおうかなんて言われたので慌ててすぐに受け取った。
鞄の中に滑り込ませて帰ろうと手を差し出してくる先輩を恨みがましく見るけれど、もう敵わないことなど百も承知なのでそっとその手に俺の手を重ねた。




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