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群青のキャンパスが一面に広がり所々に綿飴のような白い雲が浮かぶ天気の良い休日。
普段ならばその空を眺めながら創作活動をしたり日中の暖かい時間に外へ出て気分転換の散歩や書店に行くなどをして休日を有意義に使っていると思う。
なのに、今の状況はいったい何なのだろう。
その質問に答えてくれる人は居るけれど、きっと返ってくる返事は到底己では理解の出来ない回答であろう。そんななかあえて聞いてみようかとも思うけれどいろいろ怖い。
満足そうに笑う藤堂先輩に俺を見下ろしていつもどおりの、いやいつもの倍は意地悪な顔をしている五十嵐先輩。このコンビ最悪だろ・・・

「時雨君引きこもりのおかげで肌白いしもともと毛は薄いみたいだからよかったわ」
「・・・・・・はあ」
「じゃ、いってらっしゃい」

背中を押されてよろけながら先輩の隣へと並ぶ。俺を見下ろす先輩はあいもかわらず顔だけは異様に整っていて、さらに今日は服もきちんとしたものを着ているせいか更に格好いい。
それがまたムカついて下からじゃ効果は薄いとわかっていても睨んでしまう。
そんな俺の心境を世界中の皆がわかってくれたらこの苛立ちも少しは収まるのだろうか。
とはいってもこの状況がかわるわけでもないので結局俺に与えられた選択肢は諦める。そしておとなしくこの格好のまま外へ行くことだけなのだ。
まったく、昨日罰ゲームだなんだ言っていた自分を殴りたい。

「時雨ちゃーん、行っくよー!!れっつごー」
「・・・ごー・・・・」

自然に繋がれる己の手と先輩のそれ。
見ているだけで恥ずかしいのだが今の自分の姿ならば一応自然なのだろうか。
自然だといわれたら言われたでショックだが一目で男とばれてしまうのも勘弁だ。
ここまでくれば大概の人が気付いているとは思うけれど罰ゲームの内容は女装だった。
只でさえ勘弁してくれよと言いたいのに更にその格好で二番目に弱かった人――つまりは五十嵐先輩とデートしろとのことであった。
五十嵐先輩の罰ゲームはどうしたと抗議したら部長にそんな恐れ多いこと出来ないとのことである。差別だ。

今の俺の格好といえば淡い桜色のスカートに肩レースのブラウス。明るい色のセーターを上から羽織り少しヒールの高い靴を履いている。全て藤堂先輩のものだ。
そして先輩はファッションデザイナーである藤堂先輩のお兄さんの服を借りているらしい。暗い色のTシャツにジャケットを羽織り細身のジーパンを穿いている。


「とりあえずー、デートの証拠にプリクラは撮らなきゃいけないんだよねー」
「・・・そうですね」
「いいねぇー」

先輩と会話をしながら突如吹いてきた風に太腿の半分を隠していた布が捲られそうになり慌てて押さえた。その光景を常の締まりない顔で見てあろうことか馬鹿なことを言ってくる。
高めのヒールを履いているせいか視線の交わりが違う。
嬉しいことだが人工的なものに頼らねばならないのは少し悲しいものだ。

「プリクラとってさっさと帰りましょうよ・・・」
「えー、もったいなーい!」
「先輩も女装してみたらどうですか」
「俺は似合わないからいいのー」
「俺も似合いません」
「そう?すっごいカワイーけど」

この天然たらしを一回殴っても良いだろうか。
むしろ頭の中で異常をきたしていたものを解決するんじゃないだろうか。
そんな馬鹿なことを考えながら『デート』が始まった。



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