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いきなり目の前に現れた一人の男か女かわからない中世的な顔立ちのやつ。
格好も格好で男だったら王子様っぽい?ファッションで女の子だったらボーイッシュ?なファッションをしている。
声も少し低めとはいえ女の子でも地声ならこんな子いそうとは思えるぐらいの低さだ。
無駄に甲高い声出すことか声作ってキャピキャピ(死語?)してるけど意外と地声低い子多いんだよね。藤堂先輩は違うけど。
てかそれは主に従姉だったりするんだけど。彼氏さんの前と俺の前の差は天地よりもかけ離れてると思うよ。

「あー、連れがいますけど」
「そうなんだ。席が空いてないから合席させてもらおうと思ったんだけど」
「他にも一人で座っている方はいますよ」
「君がいいんだけどな」
「・・・とりあえず、諦めてください」
「ま、仕方ない。これあげる」

渡されたのは連絡先の書かれた小さな紙切れ。
なんとも言えないがとりあえず立ち去ってくれたのに安心、そしてこの紙切れを、

「何?これ」
「せ、んぱい・・・」
「これ、何?」
「知らない人から、いきなり渡されました」
「へぇ?」

なんだこれ、超怖い。
雰囲気も、声の低さも、異様な笑みの深さも合わせて、怖いぞ。
冷や汗をかきながらさっきの男女を思い出して恨みがましい気持ちに陥る。
名前的にも女でも男でもいそうなやつだったからもう性別がどっちかわからない。
てかそれより目の前ののどう見てもポケットに収まりそうにないモンスターどうにかして。
これが藤堂先輩あたりが拗ねてたりギャーギャー騒いでたら可愛いですむのにな。

現実逃避をしていればいつのまにか目の前に運ばれてた苺タルトとアイスティー。
苺の甘い香りも、茶葉の少し苦みを含んだ独特の旨味を醸し出す臭いも、今の状況をどうにかすることなど出来やしない。
とりあえずいただきますと俺の分のお金を払って拒否られて押し付けて、睨まれて、タルトに手を付けてみる。
勿論美味しいのだけど先輩が気になりすぎてダメだ。
どうやら先輩は紅茶だけ頼んだみたいなので少し気合を入れてタルトを一口サイズぐらいにしてフォークに突き刺して先輩に突きつける。

「あの、どうぞ」
「ん、ありがと」

いわゆるあーんとかいうやつなのだがよくよく考えればこれ誰得だ。
もう一口と強請られるままに与え続ければタルトはなくなり、足の疲れもだいぶ治ったので帰路へ着くことに。
荷物はあいかわらず先輩のほうが多い。

常に緩い、よく言えば柔らかい雰囲気を纏っている先輩は今日に限って真黒だ。
みるからに不機嫌という言葉が出てくるほどで、原因を考えてもあの女男しかでてこないというのも少し嫌なところである。
あの紙切れは奴がいなくなったらすぐに破いて風と一緒に旅して貰おうかと思ったのだがその前に先輩の手によって握りつぶされ踏まれてしまった。
機嫌を直すためにいつもより近い位置で歩いたり、なるべくきちんとした返事をしようとか努力したり、目を見て話してみたりした。
それでも一向に治らない機嫌に頭を悩ませていればはい到着したよ俺の家。

「あ、えと、今日はありがとうございました」
「んーん、俺も・・・楽しかったよ?」
「っ、は、はい。俺も、です」
「じゃーねー」

このまま返すと明日から気まずい、てかいろいろ怖いよまじで。
機嫌を直す方法なんてよくわかんないけど屋上で一緒にお昼寝してるときよく抱きしめられるのを思い出す。
そうそう、抱き枕がないと寝られないとかなんとやら。

「先輩っ!」

小さくさけんで荷物を地面に落として先輩の背中にタックルという名の愛情を伝えるためのハグ。
心臓の音が聞こえるように、体を押し付けて。

「先輩、また明日」
「・・・ん、バイバイ」

最後に振り返った先輩は、いつも通りの先輩だった。




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