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先輩と共にご飯を食べたが、量の少ない俺はすぐに食べ終わりソファーに横たわる。
やはり徹夜の疲れか今眠ったらもう一生起きれないような、むしろ起きたく無い様な感覚に囚われて目を閉じる。
学校に行かなきゃいけないのはわかるがどうせ始業式なんて校長とか生徒会長とかの話聞いて担任から配布物渡されて終わりじゃないか。

「しーぐーれー?」

「あー・・・もういっそ安らかに逝かせて下さい」

「何言ってんの馬鹿、ほら、五十嵐君も来てくれたんだから早くしなさい!」

会社に行く準備をしている母さんはソファーでゴロゴロとする俺を見て目を吊り上げる。
でも学校に行くにはまだ早いし、面倒だし、疲れたし・・・

「まだいつもの時間じゃないー・・・」

「五十嵐君、私もう行くからそこの連れて学校行ってね」

でも行くまで存分に楽しんでてもいいのよ、と言われたけど何が言いたいんだこの人。
本の話でもしろって?もうそんなの聞きたくないし語りたくもないぐらい疲れてるんだ、俺は人並み以上に寝ないと死ぬ気がするのに。

「はい、いってらっしゃい。お義母さん」

なんかおかしな気もしたけど先輩にお義母さん言われた本人は奇声を上げながら靴を履いて、勢いよく扉を開けると鍵も閉めずに出かけていった。
そりゃあ俺たちが家に居るとはいえ、鍵ぐらいはきちんとしなきゃいけないだろ。

「でぇー?なんでそんなにお疲れなのー?」

「あー大人の事情です」

「お前より年上だけど世間じゃまだ子供の俺が居るけど?」

「うー・・・先輩の馬鹿」

意識が少し朦朧としているせいか先輩の声が聞こえずらい。
それにフワフワとした感覚のせいか頭がまともに働かないようだ。

「馬鹿ってなにさー、俺一応学年で30位以内ぐらいには入ってるぞー」

「ねみぃー・・・やっぱこのまま逝こう」

「しっぐれちゃーん?学校サボる?」

「サボる」

「何故そこだけ正確に聞き取るんだー!」

怒ったような先輩の声もするが、学校を休むのは魅惑の選択肢だ。
てかこんなに頑張ったのだから学校ぐらいいいじゃないか。
俺は勉学が出来ずにリーマンとかの出世街道から転落してるのだろうが有り難きことに文才とやらがあるのである意味将来有望だ。
というか今既にヒット作があるのでお買い得物件じゃないか。

「んー、本当にサボっちゃうか。・・・時雨ー?遊ぼうよ」

「・・・先輩とだと遊ばれる気がするので遠慮します」

「でもー俺バイト始めたから暫く構ってやれねーんだよ」

ここで一気に覚醒。
ハッとすればぼやけた視界が一気にクリアになって、先輩の顔がドアップ状態。

バイト始めたってことは少しだけ期待してた、あの電話番号は編集の伝え間違いで全く別の人が将来編集に云々だって物凄い可能性の低い希望。
予想していたし知っていたと言えばそうなのだが、本人から聞くと重みが違う。

「知りませんよ・・・てか受験勉強は?」

「だからーバスケで推薦貰えることになってるしー学力もそこそこいいのー!」

「・・・どこでバイトしてるんです?」

「出版社。編集者の仕事ってやべぇな、あれ」

「っ・・・へぇ、そうなんですか」

一瞬の動揺は、喜ばしいことに気付かれなかったみたいだ。
その後も出版社での仕事内容をいろいろ語ってたけど一つも耳には入って来ない。
作家をしてるのだから詳しくは知らないがある程度の仕事内容は知ってるので後でちゃんと聞いてたか言われても多少のことはいろいろ大丈夫だろう。

「でー、学校サボる?」

「行かなきゃいけないでしょ。・・・行きたくないですけど」

「ならサボろうよ」

「でも」

「時雨もサボるって言ってたでしょ」

「それは願望の話です」

「でも、そう思ったんでしょ?」

否定できないのがつらい。

その約3分後、学校に熱が出たので休むと電話をした。

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