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そんなこんなで予選は見事突破し、夏休みに入り本格的にバスケ漬けな毎日が始まった。
毎日起きてバスケして食って寝るという行為しかしていない。
だから特に言うことなどないのだけれど、強いていうのならば先輩がよくかまってくるようになった。

俺が最近おかしいことに気付いてると言いながら構ってくるとか意地が悪過ぎだろう。
それでも嫌がる態度すら上手く出来なくなってきて、完全に流されているのだ。
たまに離れなきゃいけないと頭で強く思う度に先輩に近よっていく体に悶々する日々。

そんな俺を楽しそうに眺めて笑う先輩に惹かれていくと言う悪循環。
今日だって朝迎えにきて昼の休憩は俺の隣で食べていた。
ちなみに、透子さんが俺の分の弁当も作ってくれた。
どうやら俺の話を夕飯時にすることが多くなったらしい。
その時にどちらが俺のこといっぱい知っているかで競うらしい。恥ずかしい…

肩が完全に触れ合う距離で話してくるし、わざとか知らないけど耳の傍で話す。
先輩のことだからきっと故意なんだろうけど。

「おーい、天宮!ゲーム始めるぞ!」

「あ、はい!!」

昼の休憩が終わり、筋トレがやっと終わったかと思えば次はゲームのようだ。
筋トレよりは好きだけど脚が痛い。
ベンチには入っているので他の一年生よりは練習メニューが多く、正直今にも挫けそうだ。
二年生の一部にはあまり気に入られてないようだし、疲れる。

急いでコートに向かうとゼッケンを渡されて早速試合だ。
二年生たちを主体にしてるのであんまりボールは回ってこないしきてもすぐ回せと言われるので基本ずっと走ってるだけだ。

軽く汗をかいて、ゲームは何時の間にやら終わっていたので水飲んで少し休憩。
多分次は作戦のことについて話を聞いたりシュートの練習だろう。
案の定予想通りに三年生に呼ばれたので急いでタオルとか置いて走っていく。
もしこうなったらあーしろだとか、敵が何人ついたらこんな体形をしてパス回しやすくしろとか。

そんな作戦を聞いて頷くとまたゲーム始めるぞと言われる。
もう怠いし面倒だし腕痛いしバスケそこまで好きじゃないし、今直ぐにでも家に帰りたい。

「しーぐーれー!」

「・・・先輩」

「そのゲーム俺も参加するからー、時雨が負けたらー今日の夕飯時雨の家で食うー!」

「先輩が負けたら?」

「んー、チューしてあげるー」

「死ね」

周りの視線は俺らに集中してて恥ずかしい・・・
二年生達の一部にはあまり気に入られてないと言ったが、先輩と話してる時の視線には悪意を感じない。
単純に部長が居るから、とか納得出来る理由はあるけどなんだか腑に落ちない。

俺の二年生達に対する態度が悪いから嫌われてるのか?
でもほとんど五十嵐先輩以外にはこんな態度だし、むしろ五十嵐先輩よりも尊敬してるのに。

とにもかくにも部長である先輩が何時までも練習を止めるわけにもいかずにすぐにじゃあ試合しよーという掛け声で視線も霧散する。
俺もすぐにゼッケンを受け取りコートに入り、軽くシュートを打ってから並ぶ。
俺は列の一番後ろ、先輩は一番前。

その隙間でさえ、今の俺には何故か辛かった。




「いやーすいません、ほんと、時雨のお母さん料理上手!!」

「あらまぁ嬉しいわぁ」

結果は誰もが予想したであろう、俺たちのチームのぼろ負け。
いや、ぼろ負けとまではいかなかったけど結構差をつけられたし、焦った人たちがシュート失敗しまくったなどあった。
俺はまず、練習中にも言ってたけどなかなかボールには触らせて貰えないしシュートはいれたがせいぜい3本。
対して先輩は20本ぐらい入れてたし、2回ぐらいスリーポイントだった。

「・・・そしてなぜいるんだい従姉の香苗さん」

「わざわざご丁寧にご紹介ありがとう、従弟の時雨君。そしてお久しぶり!!私の萌である五十嵐君!!」

「お久しぶりです香苗さん」

え、誰これという爽やかオーラ全開の先輩。
いやもうなんていうか、本当にいい詐欺師になれそうですね・・・



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