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結果を言おう。
無事勝ち進み、俺らは本選へのチケットを手に入れた。

しかし、やはり俺の頭のねじは緩んでいたというか一本抜けていたらしくて怪我をしてしまった。
それはきっと誰にも分らないほど一瞬のもので、俺自身あまり痛くなくて大丈夫だと思っていた。
けれど気づかずに放置していたのが祟ったのか右腕が痛い。
例の不良さん達と戦ったときに手に一番酷い怪我を負ってしまったのでそれの名残もあるのだろうけど。

一応テーピングして練習ししてるのでこれ以上悪化することもないだろうけど痛いものは痛い。
誰にも気づかれないようにそっと巻いたそれに、結局気づいて欲しいと思った人には気づかなかった。
自分の中の些細な矛盾を嗤いつつ先輩離れをしようと胸の奥の痛みを甘受する。

「時雨君!今日の練習はもう終わり!明日の本選に向けて早めに終わらせるんだって」

「そうなんですか、わかりました」

シュート練習と称した精神統一は無駄に終わる。
真正面から落ち着いて投げればいつもならそりゃ失敗はあるけど大体は入った。
ちなみに今日は30本中4本しか入らなかった。

こんな状態ででれば迷惑しか掛からない。
少しでもこのチームに貢献したいという思いも連なって歯痒さでいっぱいになる。

床に散らばったボールを籠にいれて体育倉庫へと仕舞う。
向こうで今後当たる学校の対策を考えている先輩方は30分程前から隅でなにやら話してる。
その為に俺ら一年生は自主練。二年生は向こうで簡単な試合をしている。

その話し合いの中心にいる先輩は目がきらきらしてた。
好きな本を語るときと同じように、いっつも意地悪そうなその目を輝かせてる。
どこまでも澄んだその目は、透子さんの純粋な目と似通っている。
やっぱり親子なんだなあと思ったのはいつだっただろうか。
最近先輩と話してないな。

「あ、もう解散していいぞ!お疲れさん」

「「お疲れ様でしたー!!」」

体育倉庫から出ても先輩方は話し合ってて、集合して待っていれば副部長がもう解散してもいいよと合図する。
口々にお疲れさまでしたと言いながら更衣室へと向かう人ごみ。
俺もその波に逆らわずに同じ行動をして、先輩方に挨拶すれば『待ってて』と動く彼の唇。

帰ってしまおうか。
帰った方がいいのだろうな。

自分のなかの天使と悪魔、なんて表現を使わせてもらうと天使は帰るな、悪魔は帰れ。
天使はあと少しならば思う存分傍に居ろという。
悪魔はどうせ別れるならさっさと忘れてしまえと言う。
どっちも悪くない考えだと思う。
俺は悪になれるほど強くないし、天使になれるほど優しくもない。
結局俺はいつでも中立の立場をとって考えることを放棄する。

体はいつも通りの行動をしっかりと覚えていて何時の間にか着替えていつもの場所で先輩を待っていた。

「・・・・・・ほんと、俺は馬鹿だな」

恋をした少女は涙を流す。
それは残酷なまでに美しい恋という感情に、失恋という苦しい感情のために。

じゃあ泣かない、泣けない俺は?

ただの臆病者だ。



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