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ねぇ、例えばこんな言葉を君はどう思う?
愛してるって、人々が美しいと思う言葉。
でも僕には世界で一番憎しみに近く、醜い言葉だと思う。
実際に愛と憎しみは紙一重って言う言葉があるでしょう?
愛してと叫ぶたび、人の醜い本質が浮かび上がってきて。
愛されてると思うたび、人は我儘に、傲慢になっていく。
愛しているからこその憎しみがある。
憎しみがあるからこその愛情がある。
一般的に美しいと呼ばれる言ノ葉を、俺は歪んだ視線からしかとることができない。
それが評価されて作家になったんだけどね。
さぁ、御噺をしよう。
女の子が好きそうな甘い、お砂糖たっぷりの純愛物語をしようか?
男の子が好きそうな熱い、灼熱に燃えるようなスポ根物語がいいかな?
それとも、御伽噺でもしようか?
阿鼻叫喚に包まれたサスペンス?
あぁ、空想、幻想物語も書いてみたいなぁ。
手を動かすのは疲れるけれど、物語を書くのは楽しくて楽しくて堪らない。
この国の、この美しい言葉を使って沢山の事を表現して物語を書くのは胸が躍る。
雨の煌めきを
月の輝きを
空の広さを
闇の恐ろしさを
涙の悲しみを
人の優しさを
想いの醜さを
言葉にしてみたいんだ。
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