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「よーし、次は一年からも出て貰うからな」

そして己の名前が呼ばれて藤堂先輩からゼッケンを受け取ってもう一度靴紐をきつく結びなおした。
相手方もコーチからなんらかの指示を受けてそれに大きな声で返事をしている。

「ぜってー負けんじゃねーぞ」

その言葉と共にそっと背中を叩かれる。
別に思いっきり叩かれたわけではないのでちっとも痛くなどないのだがとりあえず痛いです馬鹿とかえしておいた。
そんな俺を気にする風もなくすぐに他の試合に出る奴らの方へと向かっていくその背中をただ眺めた。


「「「お願いしますっ」」」

双方の大きな声に俺の存在などすぐに埋もれてしまう。
実際相手チームになんだこのチビ的な目で見られた。絶対にあいつら負かしてやる。

審判の笛の音が響くと同時に各々それぞれのポジションへと移動していく。
俺は攻めた方がいいという先輩の独断と偏見により決まったポジションに別に不満などはない。
それでもなんでこいつがここに居るんだといわんばかりの目で見られるのは本当にむかつく。

中心に審判をはさんで並ぶ双方のチームを会場に居る全ての人間が注目している。
俺もすぐにボールが取れるようにと少し動きながらそちらに視線をやる。

審判の手からはなれ、空へと投げ出されたボールを捕まえようと飛び上がる選手が腕を伸ばす。
絶対にとれよ念を送る。

俺の方へと飛んできたボールを手に吸い込むようにそっと捕まえて走り出す。
それを防ごうと囲んでくる大きな壁を潜り抜ける、それでもまた新たな壁が通り道を塞いでくる。

リングまでの距離は、ちょうどスリーポイントの場所ぐらい。
全速力で走っていた動きをぴたっととめて一回パスするように腕を動かすがそれに気を取られる相手ににやりと笑い。
すぐに姿勢を切り替えて手を離せばリングへと入り一瞬消えるそれ。
再び出てきたボールは地面に転がった。

味方とハイタッチしながら呆然とする奴らの顔を見てもう一度笑う。
そして悔しそうな相手チームの奴に拾われた。

最初にスリーポイントをとれば味方の士気も高まるし相手への挑発にもなる。
俺いい仕事したなあといつもどおり他人事のようにふざけた様に考えてすぐに思考を切り替える。
最初に点をとったからといって勝てるわけでもないのだ。

そして相手方が投げ出すボールを追いかけた。


試合は結局俺らが勝った。
俺も沢山点を入れることが出来たと思うしまずまずの結果だろう。
終わりの挨拶を済ませ、水分補給を済ませ汗を拭く。
身体がべたべたして肌にまとわり付くシャツが気持ち悪いが後もう一試合すれば着替えれるし帰れるのだ。

今日は思いっきり惰眠を貪ろうと決め、次の試合をするべくコートへとまた戻っていく。
何気なく視線をさまよわせれば先輩と目が合った―――様な気がした。


「これでお終いですよね」

「なんかやぱり三年も試合するみたいよ?」

やっと帰れると思ったけれど違うらしい。
時雨君もしっかり汗拭いて応援してあげてねと笑う藤堂先輩に癒されながらゼッケンを着ている先輩に目を向ける。

どうして先輩は普段とバスケをするときとでこんなに雰囲気が違うのだろうか。

「反則だ・・・先輩の馬鹿」

「え?なんか言った?」

顔が熱いのはさっきまで試合をしていたからだ。
そう、断じて先輩のせいなんかじゃあるまい。



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