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「荷物持ちありがとうございました」

「いえいえー、時雨も言うようになったねー」

「数か月間毎日会ってますから」

鍵を開けながらの会話。扉が開くと俺が抑えて先輩に中に荷物をいれてもらった。

「お茶ぐらい出したいんですけど時間がありませんね」

「そだねー」

「さっさと帰ってください」

「時雨のデレ帰ってこーい!」

お礼をしたいと言外に伝えたけれどやっぱ伝えなきゃよかったとか全然思ってない。
いっつも鞄とか持ってるしいくら自習とはいえ授業を投げ出してきてくれた。まぁただたんにサボりたかっただけかもしれないけど。

「ともかくありがとうございました!で、帰れ」

最後本音が思わず出たけど気にしない。
先輩も阿呆みたいに笑ってるし俺もこの後ベッドで寝れるってことで嬉しい。
昼寝の時間にはちょっと遅いかもしれないけれどまぁ夕飯まで寝ればちょうどいいと思う。

「・・・先輩、夕飯うちで食べますか?」

「来ていいの?」

「勿論です。母も会いたいって」

「そっかー、じゃあお邪魔しようかなー」

「はい」

玄関口でのトーキング。でもいい加減座りたいとかちょっと思う。
あの野郎脹脛思いっきり蹴りやがったな。まだひりひりする。

「大丈夫?」

「え、」

「痛むんでしょー?」

「・・・はい」

するとなんかいきなり抱きかかえられる。
お姫様抱っことか本当に痛い、まじで痛いから(精神的な意味+ビジュアル的な意味)やめてくれ。
実際に言葉で言っても残念ながら何も聞いてくれず近くにある頬を押したり叩いたりしてみても笑顔で進んでいく。
何度か俺の部屋に入ったことがあったので先輩の足には迷いなんてなくて階段も足が壁にぶつからない様に注意してくれてる。

まぁ、まずそんな注意をするのであればこれを止めてくれと言いたいんだけど。

ベッドにポスッと落とされて着替えの服を俺の指示のもと出してくれたりして至れり尽くせりだ。
なんていうかとってもむず痒いんだけど好意でやってくれている物だからか余計に断り辛くて何も言えない。

「パジャマは・・・ああ中学のジャージね」

引き出しから服を取って手渡してもらう。
着替えるのとか目の前に先輩がいるからちょっとし辛いけどボタンを開けて汚れたワイシャツを脱ぐ。
清潔なシャツを貸してくれると言ったけど返しに行くのが面倒だから断ったのだ。
帰るときはブレザーで隠したから別に周りの人にも何にも思われなかったし。

腹に巻かれた包帯にそっと触れる。やっぱり痛い。
すると俺の手の上に先輩の手が重なって、少し力を込められたので痛かった。

「何するんですか」

「・・・もう怪我しちゃだめだよ」

「わかってます。痛いのはもう御免ですよ」

また手に力をかめて押される。ベッドに倒れこんで俺の視界には先輩の顔と天井。
一体何がしたいのだろうかと先輩の瞳を覗き込む。

「俺以外の誰かがこの体に触って、傷痕って言う証を付けたとか」

「・・・先輩?どうし、」

「       」


この人、やっぱり危ない。

「じゃあ俺学校戻るねー、部活終わったら来るから」

一瞬で消える燃えるような憤りの色も瞳からは消え去り口調も元に戻る。

「待って、ます」

手を振って部屋から出ていく先輩。
窓から外を眺めるとほどなくして先輩が家から出ていった。



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