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「災難だったねぇ」

「ええ。脇腹が痛みますよ」

でもお前からの究極の二択よりは災難じゃなかったけどなと言いたいけど我慢。
本当に先生のおかげでおんぶだなんて男子高校生がやると痛いものにしかならない状況を止めさせられた。
何回でも感謝の言葉を送りたい。

「バスケ、どんぐらい休めって言われた?」

「二週間ぐらいです」

「へぇ・・・そろそろ体育祭の練習始まるのに」

この学校では夏休みが始まる少し前に体育祭を行うらしい。
夏休み中には確か全国高等学校バスケットボール大会があるらしい。
まぁ、ってことは俺の怪我が治るその頃から忙しくなることを示すものであり。
再来週ぐらいに怪我しときゃよかったとか全然思ってない。

「そうなんですよね。百メートル走のタイム計ったりしなきゃいけないし」

「バスケの方もスタメン決めるために部内試合するしね」

「そーなんですか。部長様はもう決定ですよね?」

「あったりまえー」

ちょっと嫌味を込めたけれど輝く爽やかな笑顔でさくっと相殺された。
まったくもって悲しいことだ。

「時雨もスタメンじゃなくても途中でチェンジで入るかも」

「え、でも二年生とか結構いるじゃないですか」

やはりバスケ部は人気なもので三年生だけでも14人居る。
二年生だと16人。そして一年生は23人も。
俺と一緒に最初体験した奴等は勿論、他の日にも体験入部に参加してバスケ部に入ると決めた奴らなどだ。

「そーだけどさー。やっぱ俺らに取っちゃ大きな大会はこれが最後だから優勝したいしー」

だから一年だろうが強い奴が居れば使うと目を細めながら言う先輩。
どんなにふざけててもやっぱり部長なんてものをやる人だからバスケ愛的なものが強いのであろう。

「先輩が居れば、負ける気しませんね」

「でっしょー?」

ウインクしながら言ってきて思わず顔を歪めたけれど本当に勝てそうだ。
実際、この学校バスケではなかなかの強豪校らしくて昨年は優勝を逃したらしいが一昨年は優勝したらしい。
全国なんたら大会以外の冬季の大会などでもなかなかな成績を収めているらしい。

「まーそろそろ練習試合の申し込みが来ると思うから早く治してよー?」

「わかってますよ」

バスケは室内競技だからまぁサッカーとかよりは楽だし。
なんだかんだで入ったものではあるが意外と今では部活を面倒さと楽しさ4:6ぐらいにはなってきている。

ただいま電車待ち。
この時間だからあんまり混んでないとは思うけれど座りたい。

駅のホームに突っ立って雑談をぼそぼそとする。
都心とも言えないこの地域は電車はもちろん通っているものの本数が意外と少ない。
朝と夕方から夜は結構通っているんだけど。

「電車、そろそろですかね」

ホームに「電車がまいります」と女の人の声が流れる。
それを合図に黄色い線を越えないぐらいに動く。

「座りたいねー」

「はい」

もし一席しかあいてなかったら譲ってあげるよと至極当然なことを偉そうに言ってのける先輩。

ぜんぜん、全くムカついてなんかないから。



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