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「なー、時雨って修斗と仲悪いの?」

いつもどおりの帰り道で唐突に言われた言葉。

「いきなりなんですか?」

「だってさー、あんま話してないしその他諸々でー」

「確かにあまり話しませんが俺は嫌いではないですよ」

嘘。
初対面からあんまり良い印象は全くない。
しかしいくら霧ヶ峰といえども霧ヶ峰先輩なのだ。
バスケ部は比較的上下関係はそこまで厳しくはないけれどやはり目上の人に敬意を持って接しなければいけない。

え、五十嵐先輩にはって?誰それ?

「そーなのー?ま、ならいいけど」

五十嵐先輩は部長だから。
部内の空気が悪いのは敏感に察して改善に努めている。
何もしてないとか部長らしくないとか周りはそう言っているけれどそんなことはない。
だって、部長を変えるかと言われればこの人しか思いつかないんだもの。

頭を撫でられて悪い気はするようでしない。
何回も何回もやられているので慣れてきたというか諦めたというか。
先輩の大きな手は、気持ちいいから。

ハードな練習に重い荷物、帰りはなんでこんなことやってるんだと思うことも多々あるけれど。
先輩が隣にいるんだったら、もうそれでいいかなって思える。




「じゃーおつかれー」

いつの間にか俺の家についていて。
本当はもっと話してたかったなーとか後半はあまり会話は弾んでなかったのに思う。

「はい、お疲れ様です」

そう言って小さく手を振る。
いつもは俺から手を振ることなんてない。
先輩が手を振ってきたら渋々という感じで腕を少しだけ上げて振るという感じだ。

先輩は少し驚いていたようなのでしてやったりという想いだ。
いっつもからかわれているのはこちらで何時か仕返ししてやろうと思っていたし。
まぁ、さっきの霧ヶ峰先輩とのこともあるけれどさ。

にこやかに笑う先輩と手を振り合っていると後ろに衝撃が。

「しっぐれー!!お前BLかー、BLなのかこの野郎いいじゃねぇの!!」

そんな叫び声が後ろから聞こえて正体がわかってしまったこの辛さ、誰かわかってください。
五十嵐先輩は案の定俺に抱きついているのは誰なのかと眉を寄せている。それはいいからこの人をどうにかして。

「あっれー、君かっくいー!!…良い攻めね」

最後にぼそっと聞こえてきた言葉は先輩には聞こえなかったようだ。
話しかけられた?と思い近づいてくる。

そして、後ろの人物から俺をもぎ取る様に抱きしめてきた。

「っ…、先輩」

「初めまして、時雨の学校と部活での先輩の五十嵐義之です」

「初めまして、私は時雨の従姉の天霧香苗(あまぎりかなえ)です!!」

テンションの高いこの人は俺の従姉だ。
母の姉の娘で、まぁ母の家はテンションの高い人が多いと言うかなんというか。
苦手とまではいかないが時たまその感性について行けないことが多い。

「…時雨を送りに来ただけなので、これで失礼します」

「え?夕飯食べてかないの?」

「いや…ご迷惑では?」

「そんな事ないわよ!!あ、予定があった…?」

「いえいえ、あの本当にご迷惑でなければ夕飯をご一緒してもよろしいですか?」

「もっちろんよー!!きたー、イケメンきたー!!」

太陽も沈んだ空に叫ぶ香苗さんはなんかシュールだ。でも突っ込まないのが一番だ。うん。




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