2
いつもと同じように校門につくと瞬時に女の子に取り囲まれる先輩。
普段は意地悪なのに知らない女の子には妙に優しい。
先程までの飄々としたあの間延びした独特の話し方は消え去り優しい声音となる。
あんな甘ったるい声を出されたら鳥肌がたつからして欲しい訳じゃないけれどなんかムカつく。
自分にだけ意地悪されているからだと思うけれど。
ここ1ヶ月程でわかったけれど基本先輩の性格はいつも俺に見せているようなものだ。
だからこそ女の子に対しての態度が妙に気になる。
まぁ先輩も男だから女の子に対して甘くなるというか態度は男と変わるのはわかる。
でもクラスが同じと思われる人にはいつもと同じようなかんじで話していた。
それにマネージャーの藤堂先輩とかにもあんな感じだ。
意味がわからなくて頭を捻るけれど結局答えなど出てこなくて。
これは俺がわからなくていいことなんだと結論を決めて思考を切り替える。
よし、寝よう。
これまたいつもどおりに決心して階段を上る。
クラスに着くと鞄を枕に顔を伏せる。
あぁ、今日は教科書が多くてちょっと枕にしては高い。寝にくいな。
俺のような性格ならば置き勉はしていると思われがちだが基本教科書は持って帰る。
重い資料集などはおいているけれどほとんど持って帰っている。見直せよ、誰か。
特に理由なんてないけれどなんか嫌なのだ。
自分のものが手元にないというのは少しの不安を感じる。
その不安を感じることが大層面倒くさい。
教科書を机の中に入れて鞄は床に。汚いとか言うな。
結局己の腕を枕にいざ夢の世界へレッツゴー。
******
目が覚めると3時限目。
すごい眠ったなーなんて他人事のように考える。
ちなみに今は担任が教える国語の時間だ。
綺麗だけれども少し小さくて達筆過ぎる文字がこの人の難点だ。
パソコンを四六時中触っているには目は良い方だけれどもやはりそこまでいい訳もなく少し目を細めて文字を見る。
今日は文章の読解をしている。
なかなか興味のある物語を書く人だ。
前回は珍しく起きていたので次の授業も寝ないで受けようと決めていたはずだった。
しかし抗うことの出来ない眠気に負けてしまったが途中で起きたので良しとする。
空を旅する自由な鴉。
翼を切られた哀れなカナリア。
なんだか、悲しい物語だった。
あーだこーだ言っている割には淡白な感想だけど。
ただひたすらに悲しかった。
先生の説明なんて右から左へ流れていく。
この物語を自分なりに解釈する方が楽しいに決まっているのさ。
[
前へ 目次 次へ]