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「時雨ぇー」

「おはようございます」

今日も時間は止まらない。
寝たばっかりだと思ったのに何時の間にか朝が来て、先輩がいる。


先輩と出会って約1ヶ月程たった。
なんか、あっという間だったなぁと感慨など全く無さ気に考える。

風は既に生暖かくなり、暖かいとも涼しいとも何とも言えない春の終わりの、夏も始まらない時期の風。
その日によってコートがいるとかいらないとかあるので本当はもうコートなど仕舞いたいのだかできないでいる。

「寝癖ついてる」

「・・・何処ですか?」

「んー・・・此処」

そう言って髪の毛を触られた。
大きな手は頭全体を掴まれているようでちょっとの緊張。
暫く撫で付けるように押さえてもらったら満足そうな顔の先輩。

「よし、できたー」

「ありがとうございます」

「んー」

ゆっくりとした足取りだったのだがいつも通りの調子に戻す。
こんなにゆっくり歩いていたら電車に乗り遅れて遅刻してしまう。

相変わらずちょくちょくサボって、屋上へと昼寝をしに行く俺にもう辟易した教師は何も言わない。
授業日数が足りないなんて馬鹿なことはしたくないから一応授業にも出るけれど。

数学なんてさっぱり、何もわからなすぎて怖い。
小説家という職業が語るように俺は根っからの文系だ。
数学で答えをと名指しされるとき、いくら何でも基本の問題程度なら解けるけれどもそれ以上は何をやっても無理だ。
まぁやる気がないから何をやってもというのは少々語弊があるけれど。



駅のホームに降りて電車を待つ。
早く来てくれないだろうか?朝のやり取りで思いのほか時間をくってしまったらしくいつもの一つ後のだ。
先輩は何も気にした様子はないけれど、まぁ寝癖ごときで時間をとってしまったので少々申し訳ない。

あれこれ考えていると電車が来る。
壁に寄りかかっていた姿勢をまっすぐに戻して隣にいる先輩に声をかけて満員電車へとレッツゴー。

先輩は人よりも頭一つ分ほど大きいし、肩幅も成人男性よりも少し広いぐらい。
なので先輩が入ってできた小さな空間に俺はお邪魔させてもらう。
身長は確かに小さいが華奢ってわけでもないし全国平均的にはあと数センチで届くぐらいだ。
目の前の男が規格外なだけなのだ。
誰にゆうわけでもなく心の中で自分に対する言い訳をする。

「はい、此処」

本当にギリギリなんだけれども、体を張って後ろのデブから俺を守ってくれる先輩に感動。
いつもどおりに少しの空間にお邪魔させてもらって少しの時間を過ごす。
朝からそんなに話す気もないし電車は音がうるさいからで何もせずにぼーっと過ごしている。
なんか、ずっと喋っていないと気不味くなる人たちにいるけれど理解不能。
むしろ喋っていない方が心地良いぐらいだ。


目的地へと到着すると俺から先に降りて先輩があとに続いた。
改札口を通って、地下から脱出すると眩しい花が青い大空に咲いていた。
目を細めながら、隣にいる先輩に行きましょうと声をかけたのであった。





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