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女性が戸締りをしているのを一応見届けてから別れる。
しっかりと手を振りながら。
いやぁ、本当に俺いい人。
なんて馬鹿なこと考えて思い出す。
「あの・・・お名前は?」
次回からご飯とっといてもらおう・・・!!
という邪な心を隠しながら笑顔で近づいていく。
いや、違う。
俺は善人だから邪な心なんてない。
「あら、そうね。私は五十嵐透子(いがらしとうこ)っていうの」
宜しくねと差し出された手。
握り返しながら少しの違和感・・・五十嵐?
「俺は天宮時雨です。あの・・・お願いがあるんですが・・・」
「なぁに?」
「何でもいいからご飯とっといてくれませんか?勿論お金は払います」
「勿論いいわよ。何だか忙しそうだからねぇ」
「ありがとうございます」
「じゃぁ、明日ね」
「はい」
いい人だ。
背中を見つめながら思う。
物凄い上からなお願いだったし詳しくは何も言わなかった。
それでも受け入れるのだから相当なお人好しなのだろうか、それともただ単に鈍感なのか。
どちらにせよお腹がすいたのでこの手元にあるパンを食べようじゃないか。
ということで外に出ようとするけれどふと思い出す。
この学校に屋上というものはないのだろうか?
中学時代、勝手に・・・正式な手段で盗み出した屋上の鍵を片手に毎日昼寝に行っていたものだ。
数週間でその習慣さえ忘れてしまうとは己の脳の忘れる能力は物凄い。
ともかく、屋上に行くべくパンの袋を開けて口に一口含んで歩き出す。
お、これはメロンパンだ。すごい美味しい。
食べ歩きは行儀が悪いと言われるが別にどうでもいい。
階段を上りながらまだ屋上は見つからないのかと溜息をつきながら思う。
ふぅ・・・
疲れたなーだなんて思いながら息を吐く。
すると目の前にこの先屋上、立入禁止との2文字が。
やはり立ち入り禁止か・・・
ならば今日は諦めて明日鍵をとってきて昼寝の場所にしよう。
謎の決心をして階段に座って残りの一口を放り込む。
あぁ、美味かった。
そうこうしていると上から足音が。
あれ?この階段ってもう上は屋上しかないのに。
不思議に思い上を向くと
「・・・こんにちは」
「よー。さっきぶりー」
能天気な馬鹿な先輩再び登場。
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