25
腕を引かれて辿りついた先は空き教室。
なのに中にはたくさんの人の気配がする。
どういう事だろうと首を傾げると先輩は勢いよく腕を引き、扉を開けると俺を教室の中へと押し込んだ。
「遅いわよ、五十嵐、天宮君」
「・・・すいません?」
俺の名前を呼んだのは藤堂先輩。
さっきまで五十嵐先輩の相手してたからマジで天使に見える。
そして語尾がおかしくなったのは況を理解していないからだ。
ということで、俺はこの集まりがなんなのか理解できない。
中には先輩と思わしき人がたくさん。
まったくもって接点のせの字もないぐらいの赤の他人が俺に何のようだろうか。
そんな俺の困惑に何も気づいていない五十嵐先輩は俺を黒板の前まで押していく。
触るなと睨むけれど背中にあるては離れない。
「んじゃーバスケ部の臨時ミーティングを始めマース」
語尾が片仮名っぽいのに若干イラつきながらも隣で黙っている。
しかし、肩へ手が回ってきたのははらってやった。
そしたら藤堂先輩が笑った。
「でー、時雨の事なんだけどさー。レギュラー入れてもいいー?」
「は?」
昨日ニヤニヤしながら俺を見てた先輩の間抜けな顔。
面白い。
「ちょっと、五十嵐・・・いくらなんでもそれは無いだろ」
「えー?でも強かったしさー」
なんか俺抜きで話し合ってるけど、正直言ってレギュラー入りたくない。
どこかのスポ根漫画でもあるまいし。
無論、バスケを馬鹿にするわけでもないが俺にとってはどうでもいいということだ。
「強いからって・・・」
また反論しようとしたあの先輩。
そこへ助け舟を出すように藤堂先輩が話を受け継ぐ。
「確かに強かったわ。でも、体力なさそうじゃない。筋力も見た感じないし」
それを言いますか先輩。
まぁ事実なので何も言いはしないけれど。
「せめて、2学期の前半ぐらいまでは体作りや基礎力のアップを狙ったほうがいいわ。・・・シュートとか、ドリブルとかは問題ないけどね」
最後に付け足すようにつぶやいた先輩。
フォローになっているようでなっていない気もするけどとりあえず本人的にはフォローなんだから何も言わない。
俺って紳士。
「んー・・・ならいっか」
それで納得する五十嵐先輩。
俺のことを睨んでくる名前も知らない先輩。
にこやかに笑う藤堂先輩。
「じゃー、とりあえず自己紹介な」
何がとりあえずかは知らないけど、俺もとりあえず自己紹介。
ここでやっと声を出す気がするのは気のせいか?
「天宮時雨です。よろしくお願いします」
その後色々な自己紹介。
面倒くさい上、もう名前も忘れかけているので割愛させていただこう。
そして、とりあえずなんとか覚えることのできた先輩は。
さっきの名前の知らない先輩は『霧ヶ峰修斗』(きりがみね しゅうと)らしい。
そして副部長の『水城雅彦』(みずき まさひこ)って先輩。
他のレギュラー陣は・・・うん、誰か「む」から始まったきがする。
・・・・・・・知らね。
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