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時雨と呼ぶ声があるけれども完全に無視。
机に俯せになっている俺を隠すような場所に白木が立っているので安全だ。
白木は綺麗な逆三角形型の体型で細いくせに肩幅は結構あるという不思議なやつだ。

「時雨」

声に甘さというのだろうか、何というのだろうか。

「時雨」

繰り返される己の名前。
周りの女子は目をトロンとさせてうっとりと容姿に見入って、声音に聞き入る。
男子も男子で先輩ってあーだこーだなんだよなーって小声で話している。

白木も、こちらは全く聞いていないにも関わらず先輩のことを色々話している。
どうでもよすぎて死にたいぐらいなのに、聞いていられるかということだ。

「ってかお前呼ばれてんだから・・・」

「ぐー、ぐー」

たぶん思いっきりバレているであろう嘘寝の、よく漫画である擬声語?擬音語?どっちか知らないけれどとにかくそれの真似をする。

俺は何も知らない。
この先輩誰?
という態度を貫き通す。

なんだか白木の目がウザったいから一発頭叩いたけれども。
それが悪かったのだろうか。


思いのほかいい場所に当たったらしくて大声で痛いと叫ぶ。
それに鼻で笑ってまた己の腕を組んでそこに顔を埋める。


背中を叩かれた。
また白木かと思って、相手をするのも疲れるので無視する。
それでも叩いてくるからちょっとイラってきたけれど動くのが面倒だ。

「時雨、起きろよ」

「・・・」

おいおい、先輩かよ。
ゆっくりと起き上がるとニコニコしている先輩の顔。
寝起きに見る顔が先輩とか最悪。

「時雨は酷いことばっか考えるよなぁ」

「何も言ってません」

「え?俺のだい3の耳がしっかりと聞いたよ?」

「あ、ただの厨二ですか」

そう返してまた寝ようとするけれどその前に腕を引っ張られる。

「・・・・・何のようですか?」

「いやー今日は空が笑ってるねー」

知らねぇよ。
というか空は笑わねぇし。

小説を書くときに擬人法という表現技法は重要だ。
しかし、残念なことに俺は苦手だ。


現実逃避をするように笑っている空とやらをチラッと見て、腕を引かれた俺は何処かへと行くようだ。
投げやりなのは性格と、相手が五十嵐先輩だから仕方ない。




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