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そのまま保健室へと連れて行かれて、優しいお姉さんではなくお兄さんに手当をしてもらっている。
「暫くは安静にしといてね。其処の馬鹿に何言われてもバスケとか激しい運動は控える事」
「わかりました」
其処まで酷い怪我ではないので一週間もすれば痛みも完全に消え去ると言われたけれど、やはり安静が必須条件だ。
先生の言うとおりどっかのうるさい馬鹿野郎に…先輩にちょっかい出されても無視としておこう。
そして願わくは1週間誰か俺の荷物持ちをしてくれることを。
責任を持って先輩にしてもらおうかと思うけれど、やはり3年生をパシリにするとか駄目だと思う。
常識を持った後輩で良かったな、先輩。自分で言うのもどうかと思うけれど。
「うっわー佐藤先生ひっどい」
「酷いも何も先輩として後輩の介護をするならともかく完治の邪魔をするのはどうかと思うじゃないか」
遅れたが、先生の名前は佐藤明峰(さとうあきみね)先生と言うらしい。
ふざけてあっきーという渾名もあるらしいが笑顔を浮かべ、その後が恐ろしいらしい。
これは先輩情報だ。まぁ、ありがたく受け取っておくことにする。
「それじゃあ先生、ありがとうございました」
「うん、早く治るといいね」
もう一度お礼を言って頭を下げてから立ち上がる。
まぁ、まだ痛いけれど湿布がひんやりとしていて気持ちがいい。そのおかげでだいぶ良くなった。
「はい」
俺の前に屈む先輩。
この人一体何がしたいのだろうか?
「なんですか?」
「おんぶ」
「はぁ…」
この人、一応罪悪感?を感じているらしい。
しかし全く持って先輩は俺の怪我に関係ないのにここまでしてくれると申し訳ない。
「俺重いですからいいです」
「何女子みたいなこと言ってんのー。こんな時は先輩に頼りなさーい」
それでも動かない俺に先輩は
「あぁ、もう。おんぶとお姫様抱っこどっちがいい?」
「勿論おんぶでお願いします」
まだ校内だったし、足がめっちゃ腫れてたから一瞬怪訝な顔されたけどすぐに「痛そう…」って言いたそうな顔になった。
それがどうだろう。外を、男が男にお姫様抱っこされて歩くとか。おんぶもあれだけれどもそっちは酷過ぎる。
次は素直に先輩の背に近づいて首元に手を回すと足を持たれる。
「さとー先生、鞄とって」
「はい。責任もって家に連れて帰ってくださいね」
「りょーかーい」
先輩は両手が塞がっているので先生が扉を開けてくれた。
全く、今日はとんだ厄日だった。
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