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「五十嵐ってばどこ行ったのかしら」
「ですよね。まぁ、仕方ないから一人で帰ります」
「え、その足じゃ無理でしょ?荷物持ちなら私でもやるよ?」
やばい、藤堂先輩すげぇいい人。
五十嵐先輩とかふざけた先輩ばっか見てないから何か背景に神々しい光が見えるんだけど。
「大丈夫ですよ。流石に女性に荷物持たせるほど俺も馬鹿じゃないんで」
「あら、紳士だこと。部活入ってる男子って殆どがさつなのばっかだから新鮮」
笑いながら話す先輩はまるで白百合のようだ。
女性にしては大柄で、笑い方は決してお上品とは言えないけれど女性としての美しさは失われていない。
こうして入ったばかりの俺の事を心配してくれる表情も真剣なもので上辺だけでないこともわかる。
あぁ、藤堂先輩に会えたのが部活に入った唯一の収穫だ。
軽く感動しながら雑談しているとそのがさつな男がやってきた。
「よー時雨。お腹すいた?」
「なぜにその質問なんですか?」
「今日の夜飯は何かなー」
イラッ
思わず額に怒りのマークが浮かびそうになったのは仕方ない。
「帰るか」
「はい」
・・・・・・・
何故に担がれる?
「先輩、これはどういうことですか?」
「保健室へLet's go!!」
あぁ、藤堂先輩そんなに眩しい笑顔で手を振らないで。
そして何気に制服に着替えてた五十嵐先輩。
俺を担ぎながらも手には先輩の鞄と俺の鞄を抱えている。重くないのか?
もう、俺の質問に答えがないのは気にしないことにしよう。
そんなことを思いながら体を先輩に預けた。
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