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周りはしんと静まって、ボールが落ちた音が妙に大きく聞こえる。
先輩はまっすぐ俺を見ていて、俺はまっすぐに先輩を見返した。

試合は残り1分。
今ので疲れたから後は誰かに任せよう。
それにしても、本当に春休みの間に足腰が相当弱まったなぁ…

なんて思いながら、動くボールを眺める。
次にボールが来たら誰にパスしようか?

呆けながら見てたけど、俺のチームは自分がボールに触りたいって人が多かったから俺の所にはあまりこなかった。
すごい、すごい。
俺、今回の試合で1点決めたけれど、それ以外は本当に一回もボール触ってない。




まぁ、あれよこれよと試合は終了して結局俺のチームの勝利。
やっとこれで帰れるのかと思うと嬉しくてこの出来事も詩や本に風景描写として書けたらいいなぁと思う。
うーん、ともうバスケに1mmも興味が無くなってしまって考えていると先輩が横に。

「時雨、お前すげぇな」

「そんなことありませんよ」

まぁ、確かに上手く抜けられたとは思うけれど相手は同じ高1。
これで先輩とかだったら絶対に無理だった。

「ま、というわけで入部してくれたありがとな」

「・・・・は?」

コイツ、頭大丈夫か?
いつ入部するなんて言ったのだろうか?

「知りません、そんなこと。っていうか俺は入るつもり在りません」

「そーか、じゃぁTシャツとかの注文するから向こう言って来い」

いやいや、それって入部したら部活のTシャツが必要なのはわかるけれど、俺は入らないって言ったんだけど。
この人、よくある自分に都合のいいこと以外全部聞こえないって言うあの特殊な耳でも持っているのだろうか?

「せんぱーい、俺の話聞いてますか?」

「あ、そう言えばお前のバスケする姿が白鳥に見えたな」

・・・・・知らねぇよ

思わずキレかかったけれど落ち着こう。

「・・・何でですか?」

といか、普通虎とかチーターとかでたとえないか?
そこには多少興味があって理由を聞く。

「だって、白鳥って一つ一つの動作が凄い綺麗だろ?お前のフォームも基本に忠実で無駄がなかった」

素直にほめてくれるのは嬉しいけれど、このまま長くいたらなんか入部が決定になりそうだから帰ろう。そうだ、帰ろう。

そう思って足を踏み出した瞬間、筋肉がつったようなあの何とも言えない痛みを感じる。
きっと久しぶりに激しい運動したから筋肉が耐えきらなかったんだろう。
帰りたい、帰りたいのにこれでは上手く歩く事は出来なさそうだ。

「あ、足がいったかんじ?」

「はい…」

「よし、今日は俺が連れ帰ってやるからここにサインしろ」

「はぃ・・・ってこれ入部届じゃないですか」

「だって、入るんだったらこれ書かないと」

「・・・・・・」

駄目だ、本当にこの人話聞かない。

「ハァ…じゃぁ訊くが何でそんなに入りたくない?」

「面倒臭いし、眠いし、疲れるからです」

見事に3拍子で揃った怠け者宣言。
これで諦めてくれ…!!



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