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「じゃあ俺も帰ります」
とりあえず生贄になる気は無いので俺もさっさと帰ろう。
そう思っておろしかけていた鞄を肩へと戻す。
「いやいや、折角来たんだからさー」
語尾がのびるゆるい口調に思わず舌打ちしそうになりながらも拒絶の言葉を再度告げる。
それに先輩も返してくるけれど、俺に部活の体験する意思はないから時間の無駄だ。
何でもいいから帰ろう。
足を速めて走り出そうとする直前。
「っ…離してください」
見た目の柔らかさと反対の強い力。
「勝手に帰んなよー。仕方ないから俺も出るし」
何がしかたないんだよ。
というか、別に怒ってるわけじゃないのは顔とかで分かるけど、なんでこんなに強く握るんだし。
「・・・・分かりましたから、腕を離してください」
コイツ、怒らせたら怖いタイプだ。
そう、先輩のプロフィールに付け加える。
なんかこの人は絶対に忘れることは難しそうな人だ。
「ほいほーい、さ、行こー!」
腕をパッと離して笑いながら更衣室へと向かった。
俺は仕方ないから他の新入生と同じ場所へ足を進めていく。
「お、やっと来た」
説明をしている先輩たちの一人が声をかけてくる。
もう俺の事なんて放っておいてくれって言いたいけれど先輩達もこれが仕事だから仕方ないだろう。
「遅くなりました」
「いやいやー、部長があんなに帰そうとしてなかったから凄いバスケ上手そうな奴かと思ったんだけど…」
下から上へゆっくりと俺を見る。
なんか、視線が気持ち悪いけれど無視。
・・・・・・あれ?
部長って、誰?
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