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考え込むと不審に思われるとかわかっていながら、また思考の海に溺れかけていたわけだが、やっぱり良い案など思い浮かぶわけもなく。
気が付いたらちょうど家と学校の中間地点ぐらいになっていた。

でも、ここぐらいがいいかもしれない。
家の近くで香苗さんや母親に出会ってしまったらもうやばい。
応援してくれてたとはいえ、絶対あの人達ニヤニヤして変な事考えるし。

息を深く吸う。
そんなことですぐに落ち着けるわけはないけど、やらないよりはまだましだ。

「先輩」

「・・・どーした?」

歩みを止めた俺に気が付かなかった先輩を呼び止める。
隣に俺が居なかったことに気づき、俺の声にゆっくりと振り返ってくる。

「あの、っ、その」

「うん、ゆっくりでいいよ」

俯いて、制服の裾を掴んで、まるで恋する乙女の恥じらう姿に似てるけど、俺は男だ。
それでも恋する想いは一緒だから。

「先輩が、好きです」

あんまりにもあっさりと出てきた言葉に、俺自身が驚いてしまう。
恥ずかしいけど、先輩を好きって言葉は俺の正直な心からの言葉だから。

「・・・・・・」

「俺の好きは、そうゆう意味です」

「そうゆう意味って?」

いつもより少し低い先輩の声。
ドキッとしてしまうのは俺を真っ直ぐに見つめるから。

「れ、んあい的な意味です」

「本当に?」

「自分でも否定したけど、好きなんですよっ」

恥ずかしくて、半ば叫ぶように想いをぶつける。
落ち着いた声が羞恥を加速させる。

否定したんだ、嘘だって。
男同士だ、気持ち悪い、異常だ、こんなのおかしいって。

だけど、どうしたって最後に残る先輩への気持ちはそうゆう意味を持つ好きで。

「先輩の好きなんて、わかりません。でも、俺は先輩とずっと一緒に居たくて・・・」

「うん」

「ただの先輩後輩なんて嫌で、引退してあんまり会えないのが寂しくて」

「うん」

「バスケしてる先輩がカッコ良すぎるから、女の子の応援にすら嫉妬するし」

「はは、照れるなぁ」

「先輩が、好きで仕方ないんですよ」

ああ、やりきった。
まずそのことに少しの安堵を覚えるけど、この後どうなるんだろうか。
もしも振られたら、いや振られる可能性のが高いけど、俺はこの気持ちを綺麗に消化出来るのか。

「ねぇ時雨。今俺への気持ちを消せないかなみたいなこと考えたでしょ?」

「っ、なんで」

「すっごい悲しそうな顔してた」

「・・・・・・だって、きっと無理だし」

「そっか、そっか。そんなに俺のこと好きか〜」

わざとらしく語尾を伸ばし、近づいてくる先輩。

動けないよ。


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