いつ降るかじゃなくて
今日はどんよりとした重い雲が垂れ込んで、今にも土砂降りになりそうな、そんな天気。
午後から降る。とお天気お姉さんとオカンに言われて傘を片手にテニスコートへ朝練のために走った。
明るいような暗いような、そんな太陽の光も届かないような厚い雲に覆われる中朝練を終え教室に行くといつも太陽みたいに明るい華ちゃんが人でも死んだかのように暗い顔をして机に頬杖をついていた。
「おはようさん」
『あ、謙也君おはよう』
「なんや元気ないなぁ、どないしたん?」
『ううん、・・・・今日、雨だね・・・』
「せやなぁ、午後から降るってお天気お姉さんが言うとったわ」
『違うよ』
二つの黒目がちな二重が、此方を凝視している。
華ちゃんは切り捨てるように違うと言った。
・・・何が?
「やってまだ降って・・・」
そう言って窓を確認すると大きな雷が鳴って、教室に居たやつは全員悲鳴を上げて肩を竦めた。
『違うんだよ、謙也くん・・・』
再度華ちゃんが呟くと今度はバケツをひっくり返すような土砂降り。
『いつ降るかじゃなくて、今日は降っちゃいけない日なのに降ってる事が、問題なんだよ』
「降っちゃいけない日って、どういう・・・」
言いかけた俺の疑問は教室を豪快に開けて入ってくる担任の朝の挨拶と零れ落ちた華ちゃんの涙によってしぼんでいった。