いつもワンテンポズレてんねん
そろそろあかんやろ。
俺らのクラスと7組は二時間目が体育で用具の片付け担当が俺らのクラスで・・・まぁ、考えてくれれば分かる事やと思うんやけど。
毒之に全部押し付けたあいつ等はついでに暴力もふるって教室に戻った。
俺は毒之が気になってきたんやけど、もうそろそろコイツ限界とちゃうん?
あいつ等、容赦無いねん。確かに受験で苛々してるかもしれへんけど何で虐めとかするん。
"見てるだけっちゅーんも虐めてるうちに入るんやで?"
そういえば、誰かがこんな事を言っていたのを聞いた事がある。
俺のも虐めに入るんやろか・・・
俺は毒之が泣いた所も弱音を吐いたところも見たことが無い。
言わないだけっていう事もある。
・・・・あああもう!
バンと豪快に開けた体育倉庫の中には毒之が虚ろな目で這いつくばりながらこっちを見ていたが俺を見た途端に体を起こし何も無かったように俺の横を通って逃げようとした。
足、フラフラしとるやんけ。手首を掴んで行動を阻止すると眉根を寄せて痛みに耐えながらそれでも笑おうと必死な毒之を見るのが辛い。
『一氏、くん?』
「・・・もうええから来い。」
『あ、え・・・?ちょっ・・痛・・・!!』
乱暴に引っ張って連れて行こうとすると毒之は痛いってようやく口にした。
「・・・やっぱり痛いんやろ?」
『あ・・・』
しまった、という顔をする毒之を姫抱きにして体育館から出る。もう三時間目が始まってるから誰とも会わんやろ。
「俺、全部知っとるから」
すまん。
俺は謝る事しか出来なかった。
毒之は申し訳なさそうに眉尻を下げて俯いている。
そんな顔すんなや・・・
保健室に無事毒之を届けて俺は裏庭へとサボりに行った。
自分が情けない。情けない、情けない。
ダン!と傍にあった木に拳を通して苛々をぶつける。
どうして俺はこうも無力なんだろうか。そう思ったら勝手に涙がボロボロと零れてきた。
いつも俺は行動が遅いんや。虐めなんて見つけたら早うやめさせなあかんやん。
なんで見てたん。知っとるのに、何で見てるだけやったんや・・・俺アホちゃうん?
「情けない、わ・・・」
未だ止まらない涙を乱暴に拭いながらカラッと晴れた青空に「くそ・・・」と呟いた。