上がる口角
会話をする対象を看護婦から華はんに代えてお互い自己紹介をしあった。
待合室ではなく、華はんの病室で。
華はんはなんや小学校の頃からここに入院しとるらしい。
難病と闘ってるらしい。その症状は四肢に力が入らなくなる免疫性の病気。
元々運動神経に障害があったらしくこの病気にかかってしまったらしい。
今はリハビリが出来るくらい回復したらしいがいつ症状が悪化するか分からない。
『それで、小学校のころはね、テニスをしていたのよ』
「そうなんか・・・」
なんだか聞いていて物凄く悲しくなってきてしまった。彼女の前で情けない顔を晒してる自分に余計に腹が立って拳を強く握る。
華はんは『もうなれてるからだいじょうぶ』って言うた。
小さくスマン、と呟いて話題を切り替えた。否、切り替えようとした。
『あの、石田さん。お願いがあるんだけれど。』
「?」
『また、遊びにきてくれないかな?』
心細そうに笑う華はんは今にも消えてしまいそうでワシは何度も頷いた。
ワシもまた会いたいって思っとったから良かった、と安堵の溜息を吐いた。
病院からの帰り道、部活帰りの千歳はんと会うた。
相変わらずふらふらと歩いている千歳はんに「いつもよりちょっといい顔しちょるばいなんかあったと?」って聞かれて思わず上がる口角を隠さずには居られなかった。