なにしてはるんすか?
次の日も毒之は俺にピアスを外すように言って来た。
『ざ、財前くん!』
「なんや?」
『ぴぴぴ、ピアスっ!外し、てくれないかなっ!!』
「・・・・・(なんや、言えるやん)ま、しゃーないっすわ」
『え・・・』
「外したるわ。」
ただし、これはお前がやっと言えたから外すんやで?全部なわけないやん。
そう言って俺は左耳のピアスを一つ外した。
『あああっ、ありがとう!!』
口元を両手で押さえてわたわたと赤くなりながら何処かへ走って行った。
よお赤うなるやつやな。
ピアス一つ外したっただけでそないに嬉しいんかいな。
「なんや、調子狂うわ・・・」
首の辺りを人差し指でかきながら俺はヘッドホンやらなにやらを持ち、授業をサボりに屋上へと行った。
屋上のドアの前で俺は思わず足を止めた。
なんでて、声が聞こえて・・・
どうしても・・・だめ、なの・・・?わたし、二番目でもいいからっ・・・!!!
すまんなぁ、気持ちだけありがたく貰っとくわ。
っ、っらいしく・・・っ・・・
ドアの薄い鉄板で区切られた空間。
屋上にいるであろう二人の声は良く響いて俺にも聞こえた。
その薄い鉄板(ドアの締め切りの方な?)を背にしているから余計の事だ。どうやら女と男がおるらしい。女の方は泣いてるみたいですすり泣く声が微かに聞こえた。
女の鳴き声なんてベッドの上だけで十分やわ。そう思って首に引っ掛けておいたヘッドホンを装着し、雑音が遮断されたのと同時に俺の隣にある外へと通じるドアが勢いよく開かれた。
なんやねん、今度は。
バタバタと顔を手でおさえた女が階段を駆け下りる。
男がまだ居るはずや。そっとドアを覗いたらよう見知った顔が俺を見下ろしていた。
「財前、なにしとるん?」