操り人形




午後の授業が終わり、中庭を覗いてみたけれど彼女がいない。
掃除サボる気で何処かへ散歩へ行ったのか…なんて面倒くさがりなのだろうか。

「小春ーこんなとこおったんかどこ行っ「一氏、ウチ掃除サボるって担任に言うといて。ほな!」はぁ!?ちょお、小春ー!!!!」

小春がサボり…

「ありえへん…」
呟いた声は小春の耳に届くことはなく、青空に溶けて消えた。







ウチは学校の裏山に行ってみた。
すると探していた彼女はすぐに見つかったのだが、様子がおかしい。
キョロキョロとしきりに辺りを気にしている。
ウチに気付いた華ちゃんがサッと手を掲げた。

『やぁ』
「…何してるん?」
『今?今はねぇ、ヤツを探しているんだ。』
「ヤツって?」
『トトロだよ。千歳が「こん山にはトトロ絶対いるけん、探してみて」って言ってたから。見たいなって。』
「はぁ…」

あんまりにもふわふわな回答を真顔でするから深い溜め息と心労が出てしまう。
なんやって?トトロ?居るわけないやろ

『金色くんは何でここにいるの?サボり?』
「あんた探しに来たんやわ。掃除せぇへんの?」
『ん。しない。』
「なんでなん?」
『人がたくさん動くでしょ?』

たくさん動いていたらいけないのだろうか。
人間なのだから、動かなくてはやっていけない。
ウチは眉根を少し寄せて疑問を口にした。

「掃除のとき動いてもテストの時はみんなあんま動かへんやん。なんでテストは受けたないん?」
『そういうんじゃなくて。』

華ちゃんはストンと腰を下ろして綺麗に揃えた足先を見つめ、自分の膝に顎を埋めた。

『みんなで一斉に、決められたこと、命令されたことをしているのが嫌なの。なんか、操り人形みたいで…みんな嫌い。好きには…なれないな。』

だから彼女は逆らっているのか。
決められた時間までに出校し、決められた授業を受け、決められたクラスで決められた役割を果たす。
学校自体が、彼女にとって重い存在なのだ。

――操り人形みたいで――

その言葉が胸につかえた。
ふーん、と小さく息をもらしてさり気なく華ちゃんの隣に腰を下ろす。


『でも私、金色くんの事は割と好きかな』




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