再会
完治するはずの左腕が悪化してしまった。
原因は階段から足を滑らせて落下してきた子を庇ったから。つい利き腕である左を出してしまったのだ。
完治はもう少し先になりそうです。安静にしていて下さい。と医師に釘をさされ、とてもやるせない気分になる。
助けたっただけやのに、と未だに呼ばれない待合室でぼんやりと床を見つめていると看護婦ではない少しばかりおどおどとした声が聞こえて目線を上げるとそこにはあの日出会った少女が点滴と一緒に立っていた。
『いしだ、さん・・・ですか?』
「そうやけど?」
『あの…この前拾ってくれて、ありがとう。』
「あぁ、別に気にせんといて?」
『私華っていいます。その、いしださんは…腕、大丈夫なんですか?』
「ほんまは今日、完治するはずやったんやけど悪化してもうて・・・」
『そうなんだ・・・いしださん優しいから、誰か庇ったりしたんじゃないんですか?』
「よお分かったな・・・別にワシは優しいと思わへんけどな・・・」
石田さーん、とタイミング悪く看護婦に呼ばれてしまったので彼女を待たせて受付へ急いだ。
待たせた理由なんて、特には無かった。