お風呂に入りながら今日あった出来事を思い出す。
私は今日、猫を拾った。
拾った理由はこの別嬪なミルクティー色の猫の瞳が孤独に揺れていたから。
あの日の私に少し似ていると思った。
後は、美術部の作品を完成させることが出来なかった事。
まぁそれは呼び出されていきなり土砂降りの中付き合うとかそういう話になって、この土砂降りの中どこに付き合えと?と聞けばなんか呆れられたし、林檎姫にも呆れられた。
今日もあんまりいつもと変わりない。
呼び出しも結構されるし、そのたびによく分からない返答をされる。
男の子って分からない…
ザバァ…と浴槽から体を出して鏡を見つめる。
この顔は嫌いだ。
お父さんはきっと転勤とか言いながら本当は私の顔が気に食わなくて出て行ったんだとおもう。
私はシャワーを鏡にかけて濁らせてから浴室を出た。
髪を乾かしている間、ねこちゃんが私の足にすり寄ってきた。
ココアは遊び疲れたのかケージに戻ってしまっている。
私はねこちゃんを膝の上に乗せてまたドライヤーを再開した。
私がドライヤーをかけている間ねこちゃんはじっと鏡越しにこちらを見つめていた。
ミルクでも飲みたいのだろうか…
それにしてもこのねこちゃんはなんていうか、ねこちゃんの中でも凄く別嬪さんだと思う。
なんというか体もそうだがバランスがとれていて無駄がない。
『ほんま、綺麗…やんな…』
そう呟いてドライヤーを置いた。ねこちゃんの頬を指で優しく撫でてやると気持ちよさそうに目を細めて喉を鳴らしている。
『そろそろ寝るけど、ねこちゃんは夜行性だから寝ない、か…』
でも一応、暴れられたら困るので一緒の部屋に入ることにした。
勿論私の部屋では寝ない。
というか、なんか入れたくなかった。
兄の使っていた部屋で今日は寝よう。
100403*紅羽