もう少しこのままで


朝、目が覚めて大好きな人が隣にいるってとっても幸せだと思う。
でもそんなこと・・・思う暇もないから。



『ヤバイ、遅刻しちゃう!!』


「・・・ふぁ」


『もう、寝ぼけてないでさっさと着替える!』



急いで台所に立ち、朝ごはんを作り始める。
そんな中、のそのそとゆっくり起きてくる恋人。



『・・・リョーマ、ホントに遅れちゃうよ?』


「んー・・・」



覚醒してない脳でボーっとするのは分かるが・・・
今日は大事な大会初日。
シード選手に選ばれているリョーマは少し遅くに行っても大丈夫だが・・・そんな選手がデフォ負けなんてとんでもないことだ。



「ホァラ」


『カル、おはよ。今ご飯用意するからね?』



カルピンも目が覚めたのか足元に擦り寄ってきた。
甘えた声で寄ってくるカルピンを抱き上げ、片手で料理を続ける。
すると、いつの間にか後ろに来ていたリョーマが後ろから腕を回してきた。



『ちょっ、リョーマ!どーしたの?時間ないんだってば!』


「・・・」



肩に顎を乗せるリョーマに少しイラっとした私は少し強めの口調になってしまった。

それが気に入らなかったのか抱きしめていた力を更に強くした。



『リョーマ・・・どうしちゃったの?』


「・・・」



それでも何も言わないリョーマに私は作業する手を止める。
カルピンもいつの間にか部屋を出て行ったのか部屋には二人。



「・・・ごめん、だってカルばっか。」


『はい?』



ブスっとした顔で文句を言うリョーマにガクっときた私は腰に回っていた腕から逃げようと試みた。
でも、やっぱり男の人には適わなくてまたきつくしめられる。



『ちょっと!ほんとにッ、ふざけないでってば!!』


「林檎姫にはふざけてるように見えるかもしれないけど、俺は至って真面目だから。」



もう、わけわかんないと自暴自棄になってしまった自分に呆れる。



「好きだよ・・・林檎姫」


『・・・(もう・・・遅刻決定。)』








もう少しこのままで
(リョーマ、デフォ負けしちゃうって!!)
(別に、林檎姫のほうが大切。)

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