君の旋律


静まり返った教室から聞こえてくる一つの音色。
その綺麗な音色は俺の耳にすんなり入ってくる。



ガラガラ


『!?越前君!!』


「…」



音色の正体はフルート。
演奏してたのは同じクラスの…



「なにしてるの、林檎姫」


『えっと…自主練。』



ふーんと返すと大して興味なさげに教室に入る。
忘れ物を取りに来た俺は自分の席まで行くと、机の中に手を突っ込んだ。



「…」


『…』




互いに無言のまま俺は教室を出ようとした。




『部活!』


「…?」



扉に手をかける瞬間、突然林檎姫が叫んだ。
俺は何かを言いたそうにしてる林檎姫の方へと向きを変え次の言葉を待った。



『テニス…がんばって、ね?』


「!…サンキュ」




そう言われたとき、とても照れくさかった。
帽子を目深に被りお礼を言った。

それだけなのに何故かとても嬉しかった。


俺が去った後、俺を応援するかのようにフルートの綺麗な音色が廊下に響いていた。








君の旋律
(これが恋だと知るのは)
(まだ先の話。)

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