暑い、暑苦しい。
今私は四天宝寺テニス部オサムちゃん主催の肝試しに来ている。
マネージャーまで呼ばれるとは思ってもいなかったので面倒くささMAXだ。
公平にクジでペアを決めたのだが、私のペアは一番一緒になりたくなかった謙也くんと一緒になってしまった。
なんで嫌かと聞かれたらそれはまぁ、一番ビビってウルサそうだから。予感は見事に的中、さっきからずっとなんか喋ってるし。
何より私の腕に纏わりついて暑苦しいのだ。振りほどいてやろうとすると「離すなよ、離したらエルボーやからな」とエルボーを宣告された。
なんやねんほんまこいつヘタレやな、ああめんどくさい私がエルボーかましたりたいわ。普通これ男女逆やろ。やぁーだぁ怖〜いなんてレベルじゃない。そんな可愛くない。
さっきから小さな物音に反応したり私が懐中電灯で照らし出した先にいちいち反応してしがみついとる腕に力を込めたり。
こいつほんま鬱陶しいな、ラブルスとかのがまだ絶対良かったで、ほんまに。
大体あの胡散臭い男が主催なんやから大したことないやん。しかもいつもあんたらが練習に使てる学校の裏山やぞ?怖いとかほんまありえへんねんけど。

「な、なぁ、名前何でさっきから喋らへんねん!少しは喋れや!」
『……もう昔の事なんやけどな、』
「え、やだ何やのいきなり昔話とか」
『こん山で恋人に浮気された髪の長い女の人が「ぎゃああああもうその先は言うたらあかん!」』

ほんっまにごっつ怖がりやな。しかもヘタレやし。
私がそうしたんやけど、既に半泣き状態の謙也くんを半ば引きずる様にして歩いていると目の前に木が現れた。

『別れ道、やな』
「どどど、どないするん!?」
『んー、謙也くん右利きやんな?』
「お、おんそれがどうしたんや!」
『ほな右行こか』

スタスタと先を急ぐ私に引っ付きながらそんな適当でええのん!?と今にも泣きだしそうな顔と声で問われた。
別にええんやないの?
とりあえず迷ったら山下りたらええんやし。

明らかに細くなっていく道に謙也くんのしがみつく力が強くなる。
お化け怖い怖いて呟く謙也くん。
私はお化けよりもお前が怖い。
絶対腕鬱血してるぞこれ。いつか引きちぎられる持って行かれる。
そんな事を思っているとき、微かだが誰かの話し声が聞こえた。

「……名前今なんか言うた?」
『まさか』
「っ、じゃあお化けとちゃう…!!?」

何故直結するんだお前は。
どうせオサムちゃんやろ。セコいよな、あの先生。

茂みから出るとそこは折り返し地点で太い木の幹に"おめでとさん、折り返し地点や!最初に渡した1コケシ置いてってな!んー絶頂!違うか!ははっ"と白い紙に印字されていたものが貼り付けてあった。
即座に破り捨てたくなったのは言うまでもない。なんで絶頂やねんこのアホ教師頭沸いてんのとちゃう?絶頂とか言うのはあの卑猥聖書だけでええねん。
折り返し地点についたことで少し安心した謙也くんは良かったお化けからのメッセージかと思ったわとか言うて大きく息吐き出してるし。いやボケるなや、ツッコミどころ満載やぞこの紙。
最後のははっにイラついたのは私だけなのかそうなのか?とりあえずイラついたので1コケシを木の下に首くらいまで埋めて元来た道を戻る。
謙也くんが折り返し地点で安心してる間に腕を振りほどいたから行きよりは動きやすい。
それにしてもわざわざ夜にこんな事するとかオサムちゃんも暇やな。付き合わされるこっちの身にもなれやボケ。
ふぁ、と欠伸をするとまた不安になりだした謙也くんが懐中電灯を持っていない方の私の手を握ってきた。

『謙也くん?』
「怖い」

お前ってやつは。真顔で言うことがそれか。
頭痛と疲労感を覚えたのは私だけでいい。
ため息を吐こうとした瞬間、ガサガサガサと何かが茂みで動いた。
え、嘘マジで霊的な何かですか多分原因はあのコケシだろ絶対私達じゃない。
私は霊的なものだったときの責任をコケシになすりつけとりあえず落ち着いた。
そしてまた手を引きちぎられる様な感覚を覚えたので横を見ると謙也くんが激しく動揺していた。
いや本当、私はお化けよりお前が怖い。ある種の恐怖だよ馬鹿野郎。

っちゅーかここ、さっき話し声聞こえたとこらへんちゃうん?
謙也くんの方をもう一度確認するとなんや睫毛濡らしとるわ。
……え、嘘泣いてんのおまえ歳いくつだよまじありえないんやけどちょっ!!??

『そ、そない怖かったん??』
「やってガサガサって…」

あああもうこの野郎!

『謙也くん男の子やろ?泣いたらあかん。』
「やって…」

あーもう、ホント立場逆だろこれとか思いながら背伸びをして謙也くんを抱きしめる。
なんか腕の中で暴れてるけど気にしない。気にしたら負けだろ。
しばらく抱きしめたままにしておけば静かになった謙也くん。

『落ち着いた?言っとくけど、お化けなんて居ぃひんから』
「お、おん…」

暗闇でも分かるくらいに顔を赤くした謙也くんの手を引き、保育園帰りの母のような気分でスタート地点に戻った。
その間謙也くんは行きのように怖いとか言わへんくて気が大分ラクやった。


『オサムちゃんただいま』
「お、お帰り!どやった?なんか出たか?」

豪快に笑うこのコケシオタクをぶん殴ったのは言うまでもない。
謙也くんは私がオサムちゃんを殴っている間にレギュラー陣に囲まれていた。


白石「で?」
謙也「や、抱きしめられてん」
財前「は、謙也さんなにしとるんすか」
一氏「へったれやなー…」
小春「まぁ見てたけどね、謙也くんのヘタレ具合凄かったわ〜」
謙也「なっ、見てたん!?(あの話し声はこいつらかいな!)」
白石「まさか泣くとかな…」
財前「最後の方絶対ちゃう意味でドキドキしてたんとちゃいます?」
謙也「へ?」
財前「お化けやない方のドキドキ。」


















実は最初から










(ドキドキしてたかも)(お化けじゃない方に?)(ヘタレや)(あり得へん)(や、やってどっちか分からへんやん!)((((分かるやろ))))










100625*紅羽
最初からヒロインにドキドキしていた謙也くん。
あれだよ、恐怖体験をしてそのドキドキを恋愛感情と勘違いするっていうあれの逆
オサムちゃん御愁傷様!アンケにあった謙也くん甘ギャグです甘くないwwww(泣)
アンケートご協力感謝です\(^O^)/
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