紗弥香『はぁ?』


その言葉しか出てこなかった。
何をどうしたら私が光と付き合ってることになるんだろうか・・・


亞騎「さっきキスしてたやんか!」

紗弥香『残念ながらしてませーん。』

亞騎「え、でもさっき」

紗弥香『お互いのピアス確認しただけ。なんかしたの?』
亞騎「お前ピアスないやんか!」
紗弥香『ん、』

髪を耳にかけて耳を見せると紗弥香が不良になってしもたぁー!!って全力でorzをしてめちゃくちゃうざい、こいつ・・・

亞騎「ほ、ほんまにピアス見てただけ?」

紗弥香『そうだって言ってるじゃんか・・・』

亞騎「ほなら良かったわぁー・・・!!白石ー!!違うてー♪」

そう言って亞騎は白石に抱きついた。
めちゃくちゃ気まずい・・・二つの意味で・・・
だって亞騎はほもかもしれないのだ。最近女遊びが減ったのはそっちに興味が湧いたからかもしれない。だから抱きついてるのかもしれない。
そう考えるとめちゃくちゃ気まずい。
もう一つの原因は白石そのものなのだが。

白石「久しぶりやな、紗弥香」

紗弥香『あぁ・・・久しぶり・・・』

ボソボソと挨拶をしてしまう。
亞騎は良かった良かったって謙也くんにじゃれている。
こいつさぁ、ホント空気読めないよな。
自分の兄だと思いたくないんだけど。
まぁ、今は亞騎より白石だ。
私は引っ越す前この四天宝寺中テニス部にいた。
もっと言うと小学校は白石と一緒だった。
その時、私にはちゃんとしたプレイスタイルがあった。けど、もう、自分のテニスはやめたんだ。
そのキッカケとなったのが白石だった。

白石「あのままいなくなってしもてえらい心配したんやで?あと、さっき試合してたみたいやけど『ごめん』

紗弥香『もう行くから。』


私は一度も白石の顔を見ることは無かった。
見れるわけ無いじゃないか。その気持ちもあったが見れなかった。
ごめん。心の中でもう一度呟いた。







「話しくらいしたらいいんじゃないのか?」

紗弥香『っ、・・・・なんだ、真か・・・』

真「なんだはないだろ、なんだは。」


私は孤島の森の中を一心不乱に歩き回った。そして草で傷ついた足を川の中に突っ込んだ。さらさらと流れる水流にわずかに私の血が混じる。

私のあとをついてきたのか四天宝寺のマネージャーで同学年の北村真が背後に立っていた。
なぜ着いて来たのかとか、どうしてそんな事を言うのかとか言いたい事は沢山有ったが川の流れを見ているだけでそんな言葉は引っ込んだ。
ただ川を見つめる私に痺れを切らしたのか突っかからない事を不審に思ったのか呆れたのか、真は私の隣に腰を下ろして一緒に川を眺めながら呟いた。

真「お前が考えてる事を答えてやる。
俺はお前が白石部長と亞騎さんと謙也さんと居るのをたまたま見かけてあの事でも話してるのかと思って聞いていたら亞騎さんが財前と付き合ってるとかどうとか言っててだな、その後白石部長と挨拶をした後、お前が怖い顔をして茂みに突っ込んでいくのを見かねて追いかけた。」
紗弥香『長い説明ありがとう。盗み聞きとは随分趣味が悪くなったな。』
真「趣味ではないがな・・・」
紗弥香『ようするにアレだろ?みんなは私と白石に仲直りをして欲しいんだろ?少なからず、お前も。』
真「俺は、正直どっちでもいい。」
紗弥香『は?』

潔癖症で完璧主義な真が、どっちでもいいなんて曖昧な事を言うとは全くもって想像していなかった。
さっき私の隣に座った時もびっくりした。
普段のこいつなら確実にありえない行動である。余程私が悩んでいるように見えたのだろうか。

真「だから、どっちでもいい。」
紗弥香『・・・・・どうして?』
真「さぁ?俺にもさっぱりだ。だが、」
紗弥香『?』

真「大切なのは、過去でなく現在(いま)だと思うがな。」


紗弥香『・・・幾ら現在を見ようとしても過去に囚われるんだ・・・それに、私達が現在を見ようとしても周りが過去ばかり見ているようじゃあ仕方ないよ・・・』

真「きっと周りもどうしたらいいか分からないんだよ。俺は前しか見てないがな。」
紗弥香『君と言う男はそういう男(ひと)だからね、皆そうならいいのに・・・』
真「皆俺みたいなのだったら気持ち悪くないか・・・?」
紗弥香『お前って変な所人とずれてるよな』
真「まぁ、とりあえず。仲直りとかよく分からんがお前が納得すれば俺はいいと思っている。あと、財前も同じ事を言ってた。」
紗弥香『光も・・・?』
真「あぁ。
・・・・・足。」
紗弥香『ん?』
真「痛むか?」
紗弥香『いや別に?』
真「・・・行くぞ」
紗弥香『ハイハイ』


結局、草で切った足を心配され森から合宿所に引き戻された。
どっちでもいいとか思ってくれている人がいたとは思っていなかったからすこし嬉しかった。









――――――‥‥








ごめん。もう行くから。

紗弥香の声が頭の中に響いた。
彼女は一度も俺と目を合わせてはくれなかった。


謙也「亞騎ってほんまに空気よめへんよな・・・」
亞騎「せやな・・・」
謙也「白石?大丈夫か・・・?」

白石「あぁ、大丈夫や。それより亞騎、久しぶりに試合せえへん?今めっちゃテニスしたいねん。頼むわ。」

亞騎「ええけど・・・(こらあかんわ・・・)」
謙也「(白石・・・)」


紗弥香・・・・・・








――――――‥‥






合宿所に戻って真に手当てをされた。
といっても、消毒をして必要な所に絆創膏を貼られただけだが真は凄く満足そうに笑った。

その後真威と連絡をとって合流したとき案の定足について聞かれた。

紗弥香『草むらで切った』
真威『だっさ!』
紗弥香『うっせ』

そう言って笑いあえることが幸せだと感じた。
真威と真珠の笑顔に安心する私は少なからず現在を見ていると思う。


真珠『先輩達はこれからどうするんですか?私はマネージャーのお仕事があるらしいのでもう行きますけど・・・』
紗弥香『どうする?』
真威『他校と交流を深めるに決まってるでしょ☆』

では、と可愛らしく笑って真珠はその場を去った。
そして真威は元気よく私の手を引っ張ってコートへと急いだ。
あんまり行きたくないんだけどな・・・



真威は気になる学校があるんだ、と鼻歌交じりにテニスコートへ足を進める

紗弥香『せい、がく?』
真威『うん!めっちゃ強い一年生が居るって聞いて!』
強い一年生ね・・・
紗弥香『ふーん。』


桃城「あれ、あんたさっき試合した・・・」
真威『雪条真威です!桃城君・・・だよね?』
桃城「おう!桃ちゃんって呼んでくれて構わないぜ!そっちの子は?」
真威『ダブルスパートナーの蓮見紗弥香っていうんだ!因みに僕達二年生だからよろしくね桃ちゃん!』
桃城「おう!ならタメじゃねーか、名前で呼んでもいいか?」
真威『全然構わないよん♪』
桃城「なら、これからよろしくな!真威に紗弥香!」
紗弥香『(私良いって言った覚え無いんだけど・・・)』

海堂「うるせーぞ、何してる桃城」

真威『あ、海堂君だっけ?』

海堂「あ、お前さっきの・・・」

紗弥香『あー・・・さっきはその、色々悪い・・・』

海堂「別に、俺がまだ未熟だっただけだ・・・」
紗弥香『次は全力で来いよ』
海堂「たりめーだ。」

桃城・真威「『(なんだかんだで似てるよなーこの二人・・・)』」

海堂「で、何しに来たんだ?」
真威『そうだった!めちゃくちゃ強い一年ってのを見に来たんだけど・・・』

桃城「越前か!それならあっちでタカさんと打ち合いしてるぜ」

真威『ありがとね桃ちゃん!』
紗弥香『(なんか桃城って真威に似てる気がする・・・)』

私達はタカさんとやらとエチゼンとやらの打ち合いをしているコートへ行った。
真威『わーやってるやってるー♪』
紗弥香『そうだなー』

そのコートには帽子を被った小さい選手とそれに比例するようなパワープレイヤーが居た。


紗弥香『で、どっちがエチゼンなんだ?』

真威『え・・・・・・』






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