真威『やったー勝ったー!』
ぴょんぴょんと跳ねて勝利を喜ぶ真威。
桃城「くっそ、つええなアンタ!」
負けたながらも笑顔で真威にありがとうございましたと爽やかに手を差し伸べる桃城に真威もありがとうございましたと自分の掌より大きな手に掌を重ねる。


乾「・・・桃が、負けた。」
不二「この合宿、なんだか面白くなりそうだね。ね?手塚?」
手塚「・・・・・・。」

越前「・・・結構やるじゃん。」




真威『楽しかったー!あれ、まーしゃ?紗弥香は?』
真珠『紗弥香先輩なら隣のコートで・・・』
真威『隣?…うわなにあの球。コートの外側から来た・・・』

一年トリオ「「「でた!海堂先輩のブーメランスネーク!!!!」」」

紗弥香『・・・っ!?』

海堂「フシュー・・・」
紗弥香『・・・・・ふーん、そういうこと。』

亞騎「30-15」

真威『可哀相だねあの人。ね、コンコン。』
紺「そだねー。あの人凄い自分の技に自信持ってるみたいだしね」
真威『だってもう紗弥香、理解したみたいだし。』



一年トリオ「「「えっ!?あれは、ブーメランスネーク!?」」」


海堂「・・・!?」

紗弥香『なんとかシングルスコートに入ったけど、もっと深く入んないととられるなぁ・・・』


亞騎「30-30!」



結局そのあとスネークをモノにされ、自分のプレイスタイルを真似された事が余程ショックだったのか海堂の動きはどんどん悪くなった。

桃城「海堂!しっかりしろよ!」

水野「なんだか海堂先輩がもうひとり居るみたい・・・」
堀尾「このまま負けちゃうのかなぁ」
加藤「でも海堂先輩にはトルネードスネイクがあるじゃんか!」

乾「こうも真似をされては流石の海堂も・・・」
不二「それに真似をされたのが女の子だからね。相当の精神力がないとこれはキツイよ。越前でもどうかなぁ?」



真威『もうだめだね、あの人・・・』
紺「戦意喪失してる人に戦意喪失しかけてるよ、紗弥香。」
紫兎「紗弥香も昔に比べると随分プレイスタイルが変わったよな。」



紗弥香『(私のプレイスタイルなんて、もう大分前に捨てた。)しっかりしろよ。女に負けるよ?』
海堂「っ・・・!!」

悪態をつけば戦意が戻ってくるかと思い、またブーメランスネークを打ってみる。


亞騎「ゲームアンドマッチ蓮見!6−4!」


堀尾「海堂先輩が・・・」
加藤「負けた・・・」




仁王「さっきの子めちゃくちゃ強いのぅ…」
丸井「でも所詮女だろィ?」
切原「まぁ敗因は相手が戦意喪失したことにもありますよ。」








真威『お疲れ様ー、あ。ポンタありがとう!(笑)』
紗弥香『あぁ、別にいいよ。今度チュッパチャップス奢ってよ』
真威『今度ね』
真珠『紗弥香せんぱーい…』

真珠が心配してたんですよとほっぺを膨らませてきた。そのほっぺをつつきながら負けないって言っただろ?と言うと溜め息をつかれた。

真威『それにしても髪結わないでやるとか随分遊んでくれるじゃん(笑)』
紗弥香『真威だって相手で遊んでたじゃんか…』
真威『私はいいの!』
紗弥香『えー…』

紺「お疲れ紗弥香♪」
紗弥香『あ、なんだ…今井も見てたの?』
紫兎「相変わらずお前とは戦いたくないな」
紗弥香『…うっせ。私より真威のが強「あああ俺のレントラーが…!!もう許さねぇ厨ポケ使ってやらぁ!!!」
颯「力尽きた…」
準「お前らはテニスしに来たんじゃないのか…;」

紗弥香『祐也先輩相変わらずポケモンばっかりだね…』
真威『あの人にゲーム無しで生きろって方が難しいよ』

他校がわいわいと打ち合いや試合をしてるのを眺めながら左のフェンスに背中を押し付けてゲームをしまくっている祐也先輩に小さく溜め息をついた。

ポンタを飲んでいると少し前までこちらをずっと見ていたユニフォームが飛び付いてきた。

小春「紗弥香ちゃーん!久しぶりやんねー!さっきの試合見てたわぁ、お疲れさん♪」
一氏「こら小春!浮気は許さへんで!」
紗弥香『っ!小春ちゃん…久しぶり、ユウジ先輩も…』
小春「なんやえらい別嬪になりましたな、かわえぇわぁ…」
一氏「なんも言わんといきなり居なくなるやつがあるかいな!」
紗弥香『残念ながらここにいます。…そのせつはどうもすみませんでした。』

真威『???紗弥香、知り合いなの?』
紗弥香『あー、うん。ちょっと。』
一氏「ちょっとやないやろ!」
紗弥香『覇渋に来る前にいた学校の先輩?』
一氏「聞くな!先輩や!」
真威『ふーん、そうなんだ…(久しぶりに会ったっていうのにあんまり嬉しそうじゃないな…)あ、僕紗弥香のダブルスパートナーの雪条真威です!』
小春「あらこっちも可愛いわぁ、ウチは金色小春言いまんねん。よろしゅうな!」
一氏「一氏ユウジや!小春はやらへんで!えっと、そっちのメガネの子は?」
真珠『あっ、開会式でも紹介されましたが、吉田真珠といいます、その、覇渋中男子テニス部マネージャーをさせてもらってます。あの、一週間よろしくお願いしますっ…!!』
真威『そんな固くならなくてもいいのにーまーしゃ可愛い!』
財前「……先輩らキモいっすわ。いつまで紗弥香に頬ずりしてんねん」
小春「なんや光君かいな。ええやん、紗弥香ちゃんかわええんやもーん」
一氏「紗弥香!!!小春はやらんからな!」
紗弥香『あつい…』
財前「大体コイツのどこがかわえぇねん。どこも可愛いところあらへんやんけ。」
紗弥香『まぁ、否定はしない。』
一氏「せや!やから小春離れぇ!」
財前「紗弥香は可愛いより綺麗の部類や」
一氏「は!?」
真威『そっちかーい!!!!』
小春「真威ちゃんええツッコミやでぇ!まぁ、仕方ないから離れたりますわ。」
真威『伊達に3バカやってないもんね!』
紗弥香『ポンタ買ってくる…光は何の用?』
財前「別に用なんてあらへん。」

ベンチから立ち上がった私の両頬を光がすこし屈んで包み上を向かせる。
真威『なっ…!!;』
紗弥香『…?』
真珠『うわぁ…///』

財前「そういえばまだあるかな、思っただけや」
す…と光は私の髪を耳にかける
露わになった耳に空いた穴。そこには小さな赤いストーンがはめられていた。

前まで同じクラス、隣の席で同じ部活に所属してた男子が自分の頬を包み込み、あと少しでぶつかるんじゃないかという距離にいるのだが顔色一つ変えない紗弥香と財前

紗弥香『光?』

光はいわゆる美形に属する。そんな整端な顔がキスできるくらい近くにあるのだ。端から見ればキスしてるように見えるかもしれない。(本当は私の耳のピアスを確認しただけだが)

財前「あかん。」
真威『なにがだよ!』
財前「やっぱりお前の耳綺麗やなー。ええ形やわー死んだら耳くれへん?」
一氏「財前…お前も負けないくらい変態やな。」
小春「光君大胆やわぁ」

紗弥香『この穴、このまんまにしなきゃよかった…?』
財前「塞いだら塞いだで次開けるからええけど?」
紗弥香『…まさか』
財前「勿論ピアッサーはぎょうさん持ってきてるで」

もの凄く近くでもの凄く良い笑顔で光は笑った。
そろそろこの両頬を包んでいる手を退かしてくれないだろうか。

お返しと言わんばかりに光の頬を包むと真威から悲鳴が上がった。
真威『よい子は見ちゃだめですぅぅう!!!』
必死に真珠の目を塞ごうとする顔を真っ赤にした真威
財前「やられると照れんねんけど」
紗弥香『別に照れてないくせに』
財前「まぁな。誘ってるんか?」
紗弥香『死なすど。っていうかいつもやってたじゃんこうやって。』
財前「懐かしいなぁ。」
紗弥香『クラスメートにはドン引きされたよね』
財前「ほんまえぇ思い出やな」

紗弥香『……耳なら光の方が綺麗だよ。私は光の耳好きかな…』

少し冷めた感情でお互いの両頬を挟み見つめ合っているなんて端から見ればどれほどシュールなんだろうか。でもぱっと見はラブラブいちゃいちゃしてるように見えるのかもしれない。
解釈の仕様によればメンチを切り合ってるように見えるかもしれないな、なんて考えてるといきなり横からお父さんは許しまへん!と亞騎の声がした。

紗弥香『なに、亞騎』
亞騎「財前といつからそんな関係になったんや!お父さん悲しいわ!」
真威『そうよ!お母さんもそんな子に育てた覚えはありません!』

紗弥香『育てられた覚えもあんた達が私の親になった覚えもありませんー』
財前「なんや、蓮見先輩知らんかったんスか?俺らよくこんな事してましたよ?」
亞騎「ほんまか紗弥香!?」
紗弥香『だって光の耳好きなんだもん』
亞騎「お…お…俺の紗弥香が汚れてもうたぁ!あぁ!」
そう言って泣きながら亞騎はどこか別のコートへ走っていった。
小春「2人ともいつまでそのままのつもりやの?そろそろヤキモチ妬きたなるわぁ」
一氏「せや!キショいで光!」
財前「先輩らよりキショくないスわ」
そう言って私から手を離したので釣られて私も離す。隣には泣いてるのか真威がハンカチでわざとらしく顔を覆っていた。なんて大袈裟な。

金太郎「なぁなぁ小春ー。今財前とそこの別嬪なお姉ちゃんちゅうしとったん?」
一氏「ちゃうで金ちゃん。光が一方的に襲ってたんや!」
金太郎「なんやて!?財前何しとるん!女の子には優しいせなあかんのやで!?」
財前「何もしてへんわ。紗弥香のきれいな耳見とっただけですわ」

真威『うわなにこの子めちゃ可愛いぃぃ!!!名前なんていうのー?』
真威がぎうぎうと赤い髪の男の子を抱きしめて頬ずりをしながら私に名前を聞いてくる。
金太郎「姉ちゃん苦しい…」
紗弥香『え、知らん。』
真威『は?え、なんで?』
紗弥香『彼、一年じゃないの?それなら知るはずないけど…』
金太郎「せや!ワイも姉ちゃん知らんもん!」
と真威の腕の中で笑う彼に私と真威が自己紹介をすればつられて真珠も自己紹介をした。それに応えるように彼もまた自己紹介をしてくれた。
金太郎「ワイ、遠山金太郎や!よろしゅう!」
真威『金太郎君って言うんだぁ!可愛い!』
金太郎「みんな金ちゃんて呼んでくれんねんで!」
真威『金ちゃんって呼んで良い?』
金太郎「もちろんや!」
真珠『あれ、紗弥香先輩が…(サンバイザーも無い・・・)』
財前「さっきジュース買いに行きよったで?」







――――――‥‥







亞騎「うわぁぁあああん(泣)」
白石「いきなりなんやねん」
謙也「格好悪いで亞騎。」
亞騎「ええねん。今女の子おらんから」
泣き顔から真顔に一瞬で変り淡々と言ってのける亞騎に呆れという感情を持ったが最早手遅れといった所である。二人は小さく溜息を吐いた
白石「で、なんやの。今立海の試合見とるんやけど」
白石は腕を組み直して亞騎から視線を外す。

亞騎「試合はええから飲み物買いに行こや。」
白石「しゃあないわ。で?なんかしたん?」
亞騎「さっきな、俺紗弥香の試合の審判しとってん。」
謙也「そうなん?誰と試合してたん紗弥香ちゃん?」
亞騎「青学の二年の海堂や。んでな、んでな!」
白石「なぁ。勝ったん?(紗弥香が)」
亞騎「は?いや負けた。(海堂が)んでな、紗弥香ベンチに戻ってきてん。」
白石「負けたんか…(なんや余計に声かけづらいわ)」
亞騎「したら小春が紗弥香に抱きつきよってからに」
謙也「ユウジ来たんやろ?」
亞騎「おん。」
白石「いつものパターンやんな。」
亞騎「したら財前も来てん。」
謙也「それがどうしたん?」
謙也はそう言いながらフェンスを押してフェンス外に出る。

亞騎「財前がな、紗弥香に、俺の紗弥香に…」
白石「いや自分のちゃうやろ。」

妹であるはずなのに俺の、という亞騎にイライラしながらぶっきらぼうになる。紗弥香の事に関してイライラしてる理由(ワケ)なんて紗弥香がいなくなってから気付いていた。

本当は居なくなる前から気付いていたのに、認めたくなかった自分の気持ち。

謙也「はぁ!?ほんまか亞騎!?」
亞騎「おん。やって両頬包みあってたし。」
白石「は、え、ちょお、聞いてなかったんやけど。なんて?」
謙也「財前と紗弥香がキスしてたんやて…なんか聞いたところよくこんな事してるとか財前が言ったみたいなんよ」
白石「…なん…」
亞騎「ほんで紗弥香にな、」

頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。

え?財前とキス?なんやのそれ?

亞騎「……し、……いし……白石!!!!」

いつの間にか俺達は自販機の前に来ていて亞騎が衝撃を受けて放心している俺を現実に引き戻した。

白石「っ!!な、何?ぼーっとしてて聞いとらんかったわ…」
ははっと笑ってみたもののうまく笑えているか分からない。
謙也「あ、紗弥香ちゃんや」

帽子を目深に被った紗弥香は自動販売機から吐き出されたジュースのプルタブを引いた。炭酸が空気に触れる音がした。

亞騎「紗弥香ー!!」
紗弥香『ん?』
紗弥香は亞騎を見て一瞬ゲッという顔をして眉をしかめた。どうやら俺たちは視界に入っていないらしい。
なに、とジュースを喉に流し亞騎の言葉を待つ。

亞騎「いつから財前と付きおうてたん!?」




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