真威『紗弥香ー!ついたよー!起きてー!』

あー、やべーねむい・・・昨日コートであんなに騒いだからかな・・・

紗弥香『ん・・・もうついたの・・・?』


真威『もう皆降りちゃったんだけど・・・(ジト目)』
紗弥香『民間の旅客機じゃなくてよかったわー』
真威『そこかよ!』
そう、私達は民間の旅客機でここに来たわけじゃない。自家用ジェットを飛ばして此処まで来た。
ホントは孤島までフェリーを使い来る予定だった。だがアクシデントでいきなりジェットを飛ばし到着した。
当初の予定よりも1、2時間がずれてしまったがまぁ合宿に差し支えは無いだろう。
目をこすりながらジェット機を降りると荷物を丁度バスに詰め込み終えたらしいレギュラー陣がバスに乗り込み始めていた。

亞騎「やっと起きたんかー!遅いわー」
紗弥香『ごめん』
亞騎「まぁええわ。皆揃ったし合宿所に移動すんでー!」
簾「ホント蓮見さんちお金持ちですよね」
祐也「僻んでんのー?」
颯「でもお陰で僕らは快適だよねー」

バスが移動して合宿所に着いた頃にはもう十一時頃だった。
真威『僕おなかすいた〜・・・』
紗弥香『もう十一時だもんねー』
真珠『あれ、私達以外のバスも来ますね…遠いけど・・・』
紗弥香『合宿のために集められた執事さん達のバスじゃないの?』
亞騎「まぁ・・・後で分かるわ(笑)とりあえず前もって教えといた部屋に荷物置いて十一時半に1階の体育館集合してなー!開会式やるから。ほな各自荷物持って移動しいやー!」

合宿なのに開会式ねぇー、亞騎ってこんな面倒臭い事するやつじゃないよな・・・きみちゃんもそんな事しないし・・・まぁたまにはいいか。
私はキャリーバックをごろごろと転がして六階にある各自の個室へと向かった。






――――――‥‥





みんなが各自部屋へ行った頃少しして到着した立海、青学、四天宝寺の部長、レギュラー陣と亞騎が挨拶を交わしていた。


亞騎「よぉー!久しぶりやんなぁ!手塚に白石に幸村!それにみんなも!これから一週間よろしゅう!」
手塚「あぁ、久しぶりだな。これから一週間宜しく頼む。」
幸村「今日は呼んでくれて有り難う。お互いを高め合おう。」
白石「亞騎ーっ!!ほんまに久しぶりやー・・・お前らいきなりいなくなるからどないしよ思ったわー・・・紗弥香ともあのまんまやったし。」
亞騎「俺は見てのとおり元気や!ゴメンな白石、ホントは言っていくつもりやってん・・・とにかく皆部屋に案内すんで!

二階が青学の合宿部屋やで、個室やから気軽にしてぇな?細かい事は開会式で説明するからよろしゅう。あ、部屋に名前書いてあるからネームプレート確認して使こて?」

手塚「分かった。十一時半の開会式までには準備をと整えておく。そういうことだ!各自部屋に移動しろ!」


亞騎「立海の部屋は三階やねんで。さっき青学に説明したとおりや。開会式までに準備しとってなー?」
幸村「分かったよ。じゃあ皆移動して?」


亞騎「四天宝寺は五階やねん・・・うちら覇渋は六階なんやけど・・・」
白石「どないしてん?」
亞騎「おん・・・あんな、実は・・・うちの連中に合同合宿て言うてへんねん・・・」
ユウジ「っていう事は俺らが来るとか言うてへんてことかいな?」
小春「紗弥香ちゃん怒るんとちゃいますー?」
亞騎「ホントは何回も言おうとしたんや・・・」
謙也「なんで言えなかったん?」
銀「亞騎はんの事や、きっと紗弥香はんが来ぉへん言うんを考えたんとちゃいまっか?」
亞騎「おん・・・考えれば考えるほど言えなくなってしもて・・・」
千歳「俺が転校してくる前にいた子ばい?」
金太郎「紗弥香って誰なんー?」
財前「千歳先輩と金太郎はんが来る前におったテニス部の部員で俺のクラスメートだったんですわ」
白石「亞騎、俺・・・どない顔して会えばええねんやろ・・・」
亞騎「ほんまにゴメン・・・」
白石「亞騎のせいやないで。これは俺と紗弥香の問題やから…まぁ、なんとかするわ!」
謙也「ほんまにだいじょうぶかいな・・・せやけど白石も紗弥香ちゃんもなんも悪くないで。皆怒ってへんし、怒るわけないやん。むしろ俺らが酷かったし悪かった思うわ。」
白石「なんや、ヘタレのくせによう喋るやんけ。せやけど、一番悪いんは俺や。俺のせいや。」
小春「亞騎はんは紗弥香ちゃんに話すときがあったら伝えといてぇな?・・・とにかく荷物置きに行きまひょか?」
ユウジ「せやで。」
財前「(紗弥香、懐かしいわ・・・)」



ごめんな、紗弥香。俺(兄)はお前のことなんも分かってあげようとしてなかった。やから、本当のことも知らないんよ・・・お前が自分の口で伝えてくれな、俺は分からん・・・
今まで紗弥香(妹)から逃げてきた罰なんかな、ほんまに・・・ごめんな?





――――――‥‥








真威『早くっ!早くっ♪』
紗弥香『ちょ・・・早いんだけどーまだ集合時間じゃないし!』
真威『だってこんなに広いんだよ!?探検しなくて何をするの!?』
紗弥香『え、荷物整理?』
真威『紗弥香のばかー!!!!(泣)』
紗弥香『バカってなんなの・・・そんなに行きたいんなら真珠と行って来なさい!』
真威『言われなくてもいくもん!!』

ほんっと、元気なヤツー・・・
私はまだ荷物整理が終わってないので荷物整理を再開した。一週間となると荷物も多いのでしっかり分けておかなくては・・・
開会式はユニフォームを着用しなきゃいけないとか聞いていない。
ケータイで亞騎に確認を取ろうとしたらすでにメールが一通届いていた。なんで皆いるときに言わないのか、ほんとにもう少ししっかりして欲しい。
服装はやっぱりユニフォームかジャージということらしい。
ユニフォームに着替えてケータイを再確認する。
開会式のあと昼食を取るため食堂に移動するので持ち物はいらないらしい。なんかあったら困るので小銭とケータイはポケットへ入れておこう・・・

真威『紗弥香ーー!!!!(泣)』
紗弥香『今度はなんだ!!』
真威『亞騎兄ィに他の階行くなって言われたぁー!!!』
紗弥香『ふーん、真珠ちゃんは一緒だったの?』
真威『まーしゃの部屋の前ではなしてたら亞騎兄ィに言われたから帰ってきちゃった☆』
紗弥香『時間まで動くなってことかー・・・あ、真威』
真威『うん?』
紗弥香『開会式ユニフォームだって。メール着てたけど見た?』
真威『まじ!?ちょ、僕着替えてくる!』
紗弥香『あ、あと。サンバイザー・・・被る?』
真威『もち!』
サンバイザー、それは私達がダブルスペアを組んでからいつのまにか被る決まりになっていた。
本気の時は脱ぐ。本気を出さない時は被る。そんな感じ。
何故って聞かれたら困るけど、私はサンバイザーを被ると世界を遮断されたような、そんな気がして好きだ。
サンバイザーのつばが視界を狭めて、シューティングゲームでも始めるかのような、遊び感覚な感じがして。
相手に表情を探られる事も無い。






そして開会式の時間になり覇渋中のみんなで体育館に移動した。
きみちゃんがいやにニヤついててちょっと引いた。
なんかあるのかな?

亞騎「ほなちゃんと整列しー?これから皆来んねんから」

みんな?

体育館の入り口がどやどやしてきて使用人達の紹介でもするのかと思った。
でも使用人たちはこんなに五月蝿いわけが無い。じゃあ・・・
そう思ったらなんだかカラフルなユニフォームの集団がやってきた

手塚「遅れてすまないな」
亞騎「かまへんよー皆はよ整列してーな」
ユウジ「あはは待てやー小春ー♪」
小春「私のこと捕まえたらピーしてあげるぅ(はぁと」
ユウジ「よぉーし!あははは」
ユウジ・小春「「あはははは、うふふふふ」」
白石「ええからさっさと並びぃ!ここは家の学校とちゃうんやで?」
財前「先輩らほんまにキモいっスわ・・・」
金太郎「うわー、めっちゃ綺麗なとこやー!」


え、え、え?

なんで?なんで?なんで皆いるの?
私の耳には四天宝寺のみんなの声がやけに大きく聞こえた。

立海に青学に・・・四天宝寺・・・

転校してくる前に沢山聞いた彼らの声が私の心臓をドクドクの脈打たせた。
私は顔を見られないように俯き、サンバイザーを深く被った。ばれないでやっていけるだろうか・・・




それにしても。どうして・・・私は亞騎を睨む事しか出来なかった。


君彦「じゃあ開会式始めていいべ?亞騎、はじめてけ」
亞騎「ハイハイ。

それでは、これから一週間強化合宿を始めます。初めに、」


開会式は順調に行われていたが私は開会式どころではなかった。
各校の顧問、コーチからありがたいお言葉を頂いたらしいが全然耳に入らなかった。
特にきみちゃんのはよく分からない津軽弁ばかりで入らなかった。次は竜崎スミレという青学の顧問?コーチ?聞いてなかったから分からないがその竜崎先生の最後の方に言った言葉に生徒全員がざわつく事となる。
竜崎「―――・・・下さい。とくに今回主催して頂いている覇渋中学の皆さんの中には女子ダブルスで全国大会一位のペアもいらっしゃるから、皆扱いには十分注意すること。では、私はこれで。」

あーあ、もうだめだ。隠し通せない・・・整列している生徒がざわつき、冷やかしなどの声もあがっている。
左隣の真威は逆にやる気を出しているみたいだけど・・・
周りの声や視線が痛い。私の右隣の立海の部員からの視線が痛いほど刺さる。
なんだかニヤついているし、よっぽど自分に自信があるのだろう。
私はサンバイザーを深く被っているしユニフォームのファスナーを一番上まで上げて顔を隠している。真威のようにショートヘアーなら男の子に見られたかも知れないが生憎私はロングヘアーなのでまるで隠せない。
小さく舌打ちをした。


開会式が終わり皆お昼を食べに食堂へと移動した時真威と真珠に一緒に食堂へ行こうと誘われたが私には用事が出来たので先に席確保を頼んだ。

用事というのはもちろん。
紗弥香『亞騎』
亞騎「あー・・・あんな?」
紗弥香『言ってくれても良かっただろ?』

一段と静かになった体育館の壁に追いやられてしもて逃げられんくなった。や、もちろん逃げる気なんてあらへんけども。ヤバイ。やっぱり怒った。
怒ってるのが口調で分かる。紗弥香は怒ると男みたいな口調になるんを俺はよく知ってる。別にそれだけ怒られてるっちゅう事とちゃうで?

亞騎「言おうとしてん・・・せやけど、言ったらお前来てくれへんやろ?言ったら来てくれたか?」
ヤバイ、ほんまヤバイ。深く被ったサンバイザーから紗弥香の切れ長の目が俺を捕らえる。
紗弥香『別に、来ても来なくても一緒じゃないのか?そんなことなら真威だけ連れて来れば良かっただろうが』

もうこれは、男として、部長として腹をくくるしかない。そうや、さっき逃げないって決めたやんか。

亞騎「お前はそうやって逃げるんか?仲直りしたいとは思わんの?なぁ、俺は兄として、部長として!『っ、逃げてたのは亞騎の方だろ!どうしていっつもそうやって保護者面すんの?ちゃんと私のこと一回でも見ていてくれたことあった?ただ心配するだけだっただろ、結局他人ご「ちゃう!他人事やない。お前は俺の大事な妹や。なぁ?紗弥香、なんで仲直りしようと思わんの?此処で仲直りせんと一生このままやで!?」

紗弥香は黙ったまま、ただ此方を睨んでいた。
そうやってまた、ひとりになんねんな。この子はそういう子やねん。ヤマアラシのジレンマみたいなもんで、近づく事を恐れて、やっとダブルスペアの真威とかレギュラーの皆と打ち解けてきたけど、それはほんまのこいつやない。
ほんまのこいつは・・・

紗弥香『あ、き』
ダン、と胸倉を掴まれて壁に押し付けられる。俯いてるせいか表情はサンバイザーのつばに隠れて見えない。
もう怯えない、コイツを受け止めたらな・・・兄失格やで・・・
亞騎「なに?」
紗弥香は顔をあげた。その顔にさっきのにらみをきかせたような強さは無かった。ただ、怯えていた。
俺はいつになく優しい目で見つめてやる。
そのうちに紗弥香の目はじんわりと潤いを増して俺を見つめるものとなった。ごめん、泣かせるつもりでここに連れて来たんとちゃうのに。
紗弥香『わたし、は・・・』
亞騎「うん」
紗弥香『私は、悪くない・・・』
亞騎「知っとる」
紗弥香『わたし、は・・・・どうすれば・・・』
いいの?その言葉が深く俺の心を抉り、罪悪感と後悔の念を植えつけた。
俺の胸倉を掴んでいた手の力は抜け、ずるずると俺の胸をすべる。
亞騎「ごめん、ごめんな・・・」
俺はそういって紗弥香を抱きしめる事しか出来へんかった。






――――――‥‥







濡れた睫毛をごしごしと乱暴にこすって食堂へと足を運んだ。
そこではもう何人もの選手が昼食を取っておりあたりには色んな食べ物の匂いが充満していて空腹感をあおる。
真威と真珠をみつけるのがめんどくさく、厨房の前のメニューを見ながら電話をかけた。
真威と真珠の座ってる場所は分かった。その近くに覇渋のメンバーも座っていたから。一番目に付いたのは長身の紫兎だった。一瞬目が合ったがすぐに逸らした。
こんな顔見せたくない・・・
とりあえずメニューを選び注文をして、教えてもらった場所に行き真威と真珠に謝罪をのべた。

紗弥香『遅れてごめん』
真威『おっそーい!もうメニュー来ちゃうよー・・・』
紗弥香『ちょっと亞騎シバいてきたから。ごめんね』
真珠『ほ、程ほどにシバかないとだめですよ!?』
真威『まーしゃ・・・意味が分からんぜ・・・っていうか目赤いけどどうしたの?』
紗弥香『え?マジ?あー、さっき擦ったからかな?』
真威『ふーん?あ、料理きたー♪』

紗弥香『(ばれたかな・・・)』








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