「ほらっ!」
パァアーーーン

『・・・っ!!』


「こないな球も取れへんかったら俺には勝てへんで・・・?」

『はぁ・・・っ・・・はっ・・・・』

「早よ追いついて来ぃ・・・



紗弥香。」





―――――――‥‥












私はベッドから起き上がった。
目をこすり、時計を確認しながら先程見た夢を思い出す。
いつも名前を呼ばれる前に目が覚めてしまう。
彼は優しく私に語りかけているのに、私は‥‥

寝覚め最悪で罪悪感で支配された重い体の重心をベッドから冷たいフローリングへと移動する。
毎日同じような事の繰り返しに飽きながら制服に腕を通す。

ここに来る前は同じ毎日でも楽しいと感じることが出来たのに…

環境の変化とは恐ろしいものだ‥‥。


さて、と…まずは隣の部屋で寝ている兄を起こさなければ…







――――――‥‥






「なぁ…」

『なに?』

「何で起こしてくれんかったん?俺、また遅刻しそうやんかぁ‥‥」

『10回以上呼んだけど、起きなかったのは亞騎でしょう?よく言うわ。』
まさにピシャリ、と亞騎の愚痴を叩き切った。

ホントに…何度も起こしたのにこの言い草か‥‥全く呆れる兄である。


私は支度もすっかり済み、もう今まさに玄関から出るところだった。
やっと起きた兄が私を見送りに来たのだ。父さんや母さんはとっくの昔に仕事へと慌ただしく出掛けていった。

「あ、せや。今日ミーティングあるから放課後部室集合て、みんなに伝えといてくれへん?頼むわー‥‥」
くぁぁと欠伸をする兄の頭にしっかりとついた寝癖が揺れた
『え、なんかあるの?』
「まぁなー。」

曖昧に返事をされ、兄と会話を続ける気が失せた。
『朝ごはん冷めてると思うけど、残さないでね。伝言は伝えとく。じゃあ、行ってくる…』
「気ぃつけてなー」

眠い目を擦る兄に見送られ私は家を出た。








――――――‥‥










いつもより数分、来るのが遅れた。
その数分でこんなにも違うとは…
部室にはもうみんな揃っていた。今日は珍しく顧問のきみちゃんも居た。
きっと職員室に居たくなくて来たのだろう。

真威『おっはよん!あれれ、亞騎兄ィは?寝坊?』

紗弥香『亞騎ィ?寝坊に決まってんでしょ。あ、きみちゃん!亞騎が今日ミーティング開くからみんな残しとけってさ。』





真威『で?ミーティングなにすんの?』

球を打ち返しながら真威が聞いてきた。
紗弥香『聞いたらはぐらかされた・・・』
真威『あらま・・・』

パン、と真威の打った球を、取れるはずの球を取れなかった。

真威『どうしたの?大丈夫?』
紗弥香『んー、寝不足かな・・・』
はは・・・と笑い返すと眉を下げていた真威の目がにへら、と下がった。まさか、
真威『弱々しい紗弥香萌え・・・』
やっぱりか畜生
紗弥香『うるさい!萌えないッ!!』
怒りながら打ったサーブにすぐに反応する真威。
ほんと、上手いよな・・・いらん妄想とか暴走とかもするけど。
真威のおかげで、夢の事はすっかり忘れてその日の授業を終えた。





――――――‥‥




紗弥香『真威ーッ。ミーティング行くぞーおいてくぞー』

テニスバックに道具を詰める真威を急かしながら肩に掛かったテニスバックを背負いなおす。
真威とは別のクラスなので、HRの終了に応じて、互いのクラスに迎えにいっている。
真威『もうちょっとまってー・・・』
紗弥香『んー。』
見事なしょぼーん顔で私に訴えかける真威が可愛らしい。
ドアを半分くらい閉めて、教室と教室の間のスペースというか壁にもたれかかり、チュッパチャップスの包みを取っている時だった。

真珠『蓮見せんぱーい!』
んあ?と階段方向、声が聞こえた方を見れば後輩兼男子テニス部マネージャーの真珠が立っていた
紗弥香『あれ、真珠ちゃん。もしかしてわざわざ呼びに来てくれたの?』
真威『まーしゃ!?だと・・・!?』
真威は真珠が大好きらしく・・・真珠は真威にとっての充電機的存在である。
見かけては抱きつき、萌えー萌えーと鳴いている。確かに真珠は可愛い。めちゃくちゃ可愛い。充電機というのもうなずける。
紗弥香『あんたはいいからさっさと準備しなさい。』
真威『うにゅ・・・』
真威の位置から見えないところにいるまーしゃ見たさにイライラする真威が可愛いなと思った。

真珠『あの、これからミーティング行くならついていってもいいですか?』
真珠があんまりにも可愛らしく微笑むのでつい、いいよと笑いかけながら頭を撫でた。
真威『うわぁ・・・紗弥香が笑ってる・・・まーしゃ逃げてぇぇぇええええぇぇぇ!!!!』
いつの間に荷物整理が終わったのか真威が私の顔を見て叫んだ。
紗弥香『おい、私が普段から笑ってないようn『早くミーティング行こっか、ね?まーしゃ(はぁと』
紗弥香『にゃろう・・・』
真珠『あうあう…』
真威が小さな舌を出して真珠の手を引き階段を下りていった。
紗弥香『せっかく待っててやったのにあんにゃろ・・・真珠が困ってたじゃないか。』
そこかよ、と誰かにつっこまれそうだが今は生憎一人なんです。
真威と真珠の後を追うように部室へ急いだ。












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