* 真威side *




真威『ッテテ、』



紗弥香が走って言った後、その場は騒然となっていた。
亞騎兄ィと、確か…四天宝寺の部長さんが走って紗弥香を追っていった。
千歳さん?だっけ…は最初からいないみたいだけど…



真珠『先輩!なんで…あんな酷いこと…最低です!!!』


簾「真珠…ちょっと落ち着こう?」



頭が混乱している真珠をつれてその場を去った簾。
助かったというか、なんというか…



小春「大丈夫?」


真威『アッハハ、自業自得ですから…ッテテ』



唯一事情を知ってる四天宝寺中の人たち(金ちゃん以外)が寄ってきた。



謙也「無茶も程ほどにしぃや?顔に傷残ってまうで?」


ユウジ「まぁ、自業自得やもんな〜」


小春「コラッ!ユウちゃん!」


真威『…返す言葉も御座いません。』



ニヘラと笑うと頬が少し痛い。
救急箱を持ってきてくれた君ちゃん。
さっきの騒ぎで体力テストどころではなくなってしまって…本当にすまないと思ってる。



君彦「ホッペ見せで。」


真威『君ちゃん…ごめんね?皆も…せっかくの合宿ぶっ壊すようなことしてごめんなさい。』



皆混乱している中、立ち上がって頭を下げる。
すると、四天宝寺中の皆も頭を下げていた。



謙也「ほんまにすんません。詳しくは話せんけど、原因は四天宝寺(ウチ)のせいなんや。堪忍な?」


真威『わわ、皆頭上げて(汗)』



パニクる僕の頭を優しく撫でる少し大きな手。
上を見上げると君ちゃんがニッコリ笑った。



君彦「偉かったな。

でも、…取り合えず手当てしねばな?」


真威『…ッあ、うん』



ちょっとウルってきちゃったじゃんか!
泣かないけど!
最後の以外はかっこよかったのに…空気読もうよ?
















* 紗弥香side *




なんで怒られたんだろうとか、真威には関係無いだろ。とか、真威に私の何が分かるんだとか苛々は最高潮に達していた。

勢いでその場から駆け出した私を亞騎が追ってきているかもしれない。
見つからないように険しい森に入った。

お願いだから、お願いだから放っておいて…
お願いだから、お願いだから私を見ないで、見るな、見るな、見るな

情けない自分と、パートナーを殴ったこと、白石と仲直り出来ていない自分、色んな事が溢れ出して涙となって頬を伝った。もうここまで来れば亞騎も追ってこないだろう。

紗弥香『最低だ、最低だ、私…』

また草で足を切ったみたいだ、腕も切ったみたいで血が滲んでいる。

…真威は、触れないでくれると信じていた。
深い心の傷に介入しないと。だがそんなものは思い込みに過ぎなかったのだ。結局、あの時馬鹿にしてくれたときだって私が嫌だったんだ。
いつだって嫌われていたのかもしれない。
私はテニスをしていていいんだろうか、この質問を何度も繰り返したことがある。もう自問自答することも無いと思っていた。
私は、テニスをしていていいんだろうか。
もうやめたほうがいいんじゃないだろうか。
テニスをしてきて、私は人を傷つける事しか出来ていない。
みんな傷つけた。
もう、最悪だ……

紗弥香『っ、くそっ…!!!!!!』

切り立った崖に拳をぶつけていると優しい西日本の方言が聞こえた。


???「女の子がそげんこつ、するもんじゃなか。血出とるよ」

紗弥香『っ、誰だよ、関係無いだろ!放っておいてくれ!!』

泣きながら土を殴っているところを見られた、誰?分かんない。どうでもいいから、早くどこかに消えてよ

???「血出とるって、骨折したらどうする気っちゃね?」

そいつはようやく私の視界に入り土を殴る私の拳を止めた。
…………四天宝寺の、ユニフォーム…


紗弥香『離せよ!見るな、誰だよお前…っ…』
???「離さんばい。離したら紗弥香は、また殴るけん。俺は千歳千里たいね」

紗弥香『なんで此処にいるんだよ!なんで名前…っ…!!!』

千歳「昼寝してたらどかどか聞こえてここに来たとよ」


離せ離さないのやりとりを繰り返しているうちに涙が引っ込んだ。
どうして、どうして。色々な"どうして"そればかりが頭をぐるぐるとする。

千歳「そこに川があったけん、行くばい」

千歳と名乗った長身の男に手を引っ張られ川へ連れてこられた。
本日二度目の川である。俯いていると腕に冷たい感触がした。

紗弥香『っ、めたっ!』
千歳「血……」

千歳は川で濡らしたハンカチで私の傷を拭っていた。
可愛らしいジブリキャラクターのついたハンカチが茶色く変色した私の血で汚される。

紗弥香『自業自得だし、こんなんほっとけば治る…』

もはや抵抗する気力さえ残っていないわたしはされるがままで。

千歳「白石と喧嘩ばしたと?」
紗弥香『聞いたの…?』
千歳「喧嘩したとしか聞いとらんばい」
紗弥香『この傷は、違うけど…』
千歳「そうだよな、いくらなんでもそれはなか」
紗弥香『これは森に入って草むらとか枝で』
千歳「分かっとうよ」

紗弥香『……聞かないの…?』
千歳「聞いてもよか事なら聞く」
紗弥香『ちょっと嫌な話しだけど…』
千歳「それで紗弥香がすっきりするならいくらでも聞くけん、ゆっくりでよか。」









* 亞騎side *

紗弥香『っにすんのさ!』
あたりに響いた紗弥香の声に周りが騒然とする。
なんか、紗弥香イライラしとる…やっぱり俺のせいやんな…


真威『いや?別に何って訳じゃないけど?』

紗弥香『…喧嘩売ってんの?』

あかんあかんあかん。紗弥香半ギレやんか

追い討ちをかけるように真威が紗弥香に核心をつく。

真威『…ね、紗弥香はさ、何しに此処にきたの?』

紗弥香『は?』

紗弥香『…テニスに決まってんじゃん!!』

真威『本当にそう?
さっきから、名前呼んでも返事しないし…なんか別の事考えてんじゃないの?』


あかん、それ以上は

真威『ってか、真面目にヤル気ないならやめれば?
はっきり言って、テニスに私情持ち込まれるのは困るんだよね?』

ここで止めることが出来ひん俺は兄として失格や、白石もどうしたらいいか分からんくなっとる。あかん、紗弥香キレるで。

真威『皆思ってるよ?
紗弥香がハッキリしないから…
ハッキリ言えばいいじゃん。
嫌なら嫌って、人間なんだからさ?
いつまでも甘えんなよな!!』

亞騎「おい、真威!言い過ぎや!!」

真威『亞騎兄ィだって思ってるんでしょ?
こんなにウジウジしてる紗弥香をウザイってさ?
言ってやればいいじゃん?
こんな紗弥香大っ嫌いだってさ!』
紗弥香『…っざけんな!!』

バキッ


真珠『先輩ッ!!』

ほら、あかんって言うたやろ。
真珠は顔を青くしている。そらそうや、大好きな先輩が喧嘩しとるんやし。
他の人達は何がなんだか分からないような顔をしていた。

真威『殴って気がすむなら殴れば?
そんなことしても、何も起こらないけどね?』

紗弥香『ッ!!』

真珠『紗弥香先輩!!』

亞騎「真珠ちゃん!…俺が行ってくる。」

かけだそうとした真珠ちゃん引き止めて駆け出す。
森に入っていった紗弥香を追っていると白石も来て一緒に走っていた。

白石「なんか、気付いたら走っとった
放っておけんくて、胸が痛なって、気付いたら」
亞騎「白石…」


白石「あれ、千歳?」

白石の足の速度が落ちて先を見つめる。
その視線の先に俺も目をやった。
あかん、見てられん。
人前で泣かない紗弥香が千歳の前で泣いとった。


白石「っ、紗弥香…」
亞騎「ちょい待ちぃや白石。今出てったら余計に紗弥香を苦しめるだけやで…」
白石「……おん…」

俺たちは紗弥香と千歳の後を追って物影で会話を聞くことにした。
さっきよりは紗弥香も落ち着いているようで安心した。






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