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いいこ専用コーンポタージュ

◆◆◆◆


静かに扉を開けて部屋に入ってきたサンジの異変に気付いたのはすぐのことだった。前かがみになった彼は、不自然に膨らむお腹を押さえてこちらへ歩いてきた。レイドの顔を見て、しーっと人差し指を口を当てた彼に、レイドもオーバーに手で口を覆い頷いた。

ころん。Tシャツをめくって出てきたのは、甲羅だった。それはテーブルに置いてやると、ゆっくりとそこから顔と手足を出す。「亀、ですか?」思いもよらない生物の登場に、レイドが少し驚いた。頷いたサンジは、「蹴られたから、怪我をしてるかも」と心配そうに亀の顔を覗き込んだ。主人の言葉にレイドがすぐに救急箱を用意する。僕がやる、とサンジが箱を受け取った。

「サンジ様はお優しいですね」

手当のやり方を教えていたレイドが、微笑ましそうに言った。しかし、その言葉を聞いた彼はガーゼを付けようとした手を止めた。

「それって、いいことなの?」

思わず、「え?」と聞き返してしまった。僕が優しくしたから、この亀は蹴られたんだ。そう彼は続けた。彼の言葉に、自分の軽率さに気付かされる。否定するべき、なのだろうか。自分がまだ、ジェルマの使用人であるのならば、そんな感情は否定すべきなのだ。きっと。

「……いいことに決まっているじゃないですか」

膝を折って、視線を合わせてそう言った。悲しいことを聞いてきた、その少年の顔に触れた。いつもは自分から主人に触れることのないレイドの行動に、サンジが目を見開く。その表情に、レイドがやわらかく目を細めた。

「私はお優しいサンジ様が好きです。お仕えできて、嬉しく思います」
「……本当?」

もちろんだと深く頷いて答える。そのまますっと立ち上がったレイドは、「紅茶はお好きですか?」と主人に聞いた。





亀の手当を終えたサンジをソファに座らせ、レイドは用意したティーカップにお茶を注いだ。透き通った茶色の水面に、ぽとんと角砂糖を落とすとゆらゆらと映った主人の顔が揺れる。最後にミルクを注ぐと、紅茶は次第に色を変え、ミルクティーへと変化した。

サンジはそれを一口飲むと、「おいしい!」と嬉しそうに言った。今日の茶葉は、レイドが気に入っている種類の、さらに王族用の高級品だ。気に入ってくれてよかった。レイドも、とサンジが自分の隣に座らせ、レイドの分の紅茶の用意を始めた。さすがに自分の分はさせられない、と言ったのだが、「いいの!」と強くサンジが断る。

「はいどうぞ。めしあがれ」

満足そうに出した彼に苦笑しながら頂く。茶葉がいいだけのことはあり、とてもまろやかで美味しい紅茶だった。感想を待っているような顔をするサンジに「美味しいです」と答えると、にーっと彼が笑った。


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