04







「ルパン、五ェ門早く乗って!!!」

その言葉にルパン達は慌てて車に乗り込む。次の瞬間、イヴがエンジンをかけた。だが同時に次元はあることに気付いた。

「!!!おいちょっと待てイヴ…!!!」




既に遅かった。























イヴは車を信じられない速さで発進させたのだから!

「うおっ!?」
「ぎゃあああああイヴちゃぁぁぁあん!!!?速すぎなぁぁああい!?」
「…っ!!」

今まであらゆる修羅場を抜けてきた三人もあまりの暴走さに車に掴まっているのがやっとだ。それほどにイヴの運転は恐ろしかった。

「イヴちゃぁぁん!!!怖い怖い速すぎない〜!?」
「奴等に追い付かれてしまうで、しょ!!!」
「ぎぃゃああああ急カーブぅぅぅ!!!」

さすがのルパンも泣きが入る。当のイヴは笑みまで浮かべながらハンドルを操っていた。

「##NAME3##、イヴは運転がものすごく荒いんだ!!!だがスピードならイヴに追い付けるやつは…いねえ!!!」
「そういうことはもっと早く言いなさいよォォォ!!!」

数多くの車が必死にイヴの車を避けている。ヘリはお構い無しに銃撃を続けるが、やはりイヴのスピードに追い付けずになかなか当たらない。

「ふっ、アフリカ南部戦を思い出す!あの頃はぶちかましたものだ…!」
「ちょっとォォォイヴちゃん性格変わりすぎィィィ!!!」

ルパンの叫びが道路に木霊する。イヴはハンドルを握ると豹変する。これは軍人時代から変わらなかった。だからこそ次元は気付いたのだが、長年の月日ですっかり忘れていた。

「こ、このような運転…とてもイヴとは思えぬ…!!!」
「イヴなんだよっ…!!タチが悪いだろ…!」
「イヴちゃぁぁぁぁん!!!撃たれなくても俺様、死んじゃいそう!!!気持ち悪い〜!!!」
「うるさい、黙れルパン!!!これくらいでガタガタぬかすな!!!」
「女の子でしょぉ〜!!!そんな言葉遣いしちゃいけません!!!」

やがて車は高速道路へ入り、ヘリもそれを追う。

「ちょっとォォォ、イヴちゃん高速はまずいんじゃないの!?」
「ダメだルパン!!イヴは聞いちゃいねえ!」

次元も帽子を押さえて叫ぶ。その時だった。
















「見つけたぞぉ〜!!!ルパァ〜ン!!!」
















「げっ!?とっつぁああん!?」
「こんな時にかよっ!!!」

そこにはパトカーでルパン達を追いかける銭形の姿があった。銭形はヘリに気付いていないらしい。

「がっはっはぁ〜!!ようやく見つけたぞルパン!おとなしくお縄につけぇ!!」
「とっつぁん、上見えないの上ぇ〜!!」
「ん?上?」

ひょい、とパトカーの窓から空を眺めた銭形は目を見開いた。ようやく武装ヘリの存在に気づいたからだ。

「な、なんだあ!?こいつらはぁ!?」

するとヘリは銭形達のパトカーにも発砲してきたのだ!さすがにヤバイ連中だと直感する。

「あ、ICPOをなめおって……んっ!?」

噴煙の中、銭形はあることに気付いた。ヘリの銃撃をかわしながら、物凄いスピードで逃げるルパン達の車を運転しているのは見慣れない女だった。

「あの女…なにもんだ?見たことない顔だ…どわああああ!!!」

しばし呆然としていた銭形はヘリの銃撃を受けたパトカーごとひっくり返った。そのままパトカーは運転不可能となり、止まってしまう。

「く、くそお!!覚えていろぉー!!!」


























ヘリはまだルパン達を追っていた。未だイヴはスピード最大限で逃げているが、車のスピードはもうこれ以上出ない。

「くそっ…軍の装甲車ならもっとスピードが出るのに…」
「イヴ、軍用じゃねえんだ!俺がヘリを撃つ、スピードを落とせ!」
「バカ言うな次元!!奴等は頭上から狙ってる!いくらお前が早撃ちだからって…「イヴ!!!」」

次元はイヴの言葉を遮って風を受けながら叫んだ。















「俺を信じろ!!!」















「……わかった!」

イヴはブレーキを踏み、次第にスピードを落としていく。次元は真っ直ぐマグナムを構え…















ダァァァン!!!













次元の放った銃弾はヘリのプロペラ部分に当たり、爆発炎上した。車を止めたイヴは軽くため息を漏らし、ルパンが車から降りた。

「ふう〜やっと止まった。奴等、なにもんでしょーね」
「雇い主だとよ、イヴのな」
「成程ね〜、自ら俺達を殺そうってわけ。イヴは生け捕りにするつもりだったんだろうよ」
「む?」
「オッドサファイアは持ち主<イヴ>が死んじゃ、ただの眼球なんだとよ。まあ、噂に過ぎないがな。オッドサファイアは世界にただひとつイヴのだけ、そういう噂も出回るもんよ」

ルパンが五ェ門にひととおり説明し終える。イヴは運転席で少し怯えた表情になった。

「…こんなに強行手段を使ってくるなんて」
「……お前さんのことなら心配いらねぇよ。あの程度なら大したことねえだろう」

そう言ったのは車から降り、ペルメルに火を灯した次元であった。イヴは次元の方を見る。

「そうだろ?ルパン」
「勿論」

そう言って嬉しそうにルパンはジャケットの中から妙な機械を取り出した。

「何…それ?ルパン」
「ヌフフフー##35##イヴちゃんと次元がデートしてる間に俺らんとこにさっきの連中の仲間が襲ってきてさぁー。逃げたそいつらのスーツに発信器を付けたわけよ!」

近付いてきたイヴと一緒に手に持っている機械をのぞくルパン。画面には地図と、その中に赤い点が映し出されていた。

「ルパン、そやつ今、どこに?」
「おー、逃げたみたいだ。……奴らの巣は…」

ニヤリ、と笑ってイヴの手をちゃっかり握った。














アメリカ、ニューヨークだ!
























ロンドン警視庁に銭形はいた。ルパンが大英博物館のエジプト王の棺を盗んだ際、まんまとしてやられた。今回も逃走中のルパン達を見つけたが謎の組織に邪魔されてしまった。鬱憤を晴らすように銭形はコーヒーとバーガーを口に詰め込んでいた。

「警部、わかりましたよ!」
「おう、どうだ?」

走ってきた警官からファイルを受けとる銭形。彼はずっと気になっていたことがあったのだ。

「女の名はイヴ・メイフィールド。元米軍特殊部隊隊長の大佐で現在は裏世界で殺し屋をしているようです」
「そう、この女だ!ルパンの仲間ってわけかぁ!?」

銭形はルパン逃走時に運転していたイヴを調べていたのである。不二子とは違う、それも只者ではなさそうなオーラを纏った美しい女だった。

「ん、確か元軍人だったと言ったな」
「はっ」
「この若さ…しかも女で大佐とはなぁ…。今は殺し屋…こいつに何があったんだ?」
「いえ、五年前に戦死したと思われ、軍籍を抹消されているのです。それが何らかのことがあり、殺し屋として目撃され…」
「フーム…空白の五年間…元軍人の女…ルパンとどういった関係なんだ?」

顎に手を当て、銭形は考えた。だが最終目的は一つ。

「よし!その女の居場所さえ掴めばルパン達が一網打尽ってわけだな!!イヴ・メイフィールドもろとも逮捕だぁー!!ルパァーン!!!」




























夕暮れの川辺。ルパン達の乗っていた車はイヴの激しい運転に耐えきれず、あらゆる箇所が破損した。

「ったく、これは装甲車じゃねえんだぞ!加減を考えろ!」
「そんなこと言って無理でもしなきゃ私達みんな今頃蜂の巣よ!」
「まーまー、お二人さん!いいんじゃないの命助かっただけでも!でもイヴちゃんの運転に耐えきれるような車に変えなきゃねぇ〜。俺と五ェ門でちょ〜っくらそこのカーショップ行って交渉してくるわ」
「おう」

なかば強引に五ェ門を引きずってルパンはカーショップへ歩いていった。残されたのは破損した車に寄りかかり、ペルメルを吸う次元と立ち尽くしながらオレンジに染まる空と川を眺めるイヴ。

「…幻滅した?」
「……なにがだ」
「所詮、戦いの中でしか生きられない女だと…」

ギュ、と夕日に染まったブラウンのワンピースを握りしめるイヴ。次元はただイヴと同じように空と川を眺めているだけ。

「…ハンドルを握るといつもそう。昔の癖が出てしまう……こんなこと、もう忘れたいのに…」

戦いの記憶は消えない。今まで死と隣り合わせで生きてきたイヴには戦い無しの人生なんて送れない。だから軍役を終えた今でも人を殺める仕事をしてしまう。

「もっと……もっと、普通に。普通に…生きたいと思っても、私には無理よ……」









着飾って



恋して




生きたいのに出来ない




「……幻滅だわ……」














「いいんじゃねえのか」

ふっ、と漏らした。

「そのまんまのイヴでいいだろうが。無理に綺麗ぶんなくてもよ。俺は──色気をふりまいてる欲のある女なんかよりも








ずっといいと思うがな」

フーッ、と煙を吐き出す次元の言葉にイヴは驚いたようだった。だが、すぐにクスッと小さく微笑んで…











そっと歌い出した。











幸せをたずねて
私は行きたい



茨の道も
凍てつく夜も
二人で渡って行きたい





旅人の寒い心を
誰が抱いてあげるの
誰が夢を叶えてくれる







炎と燃え盛る
私のこの愛
あなたにだけはわかってほしい
絆で私を包んで











荒野をさすらうあなたを
眠らせてあげたいの
流れ星はあなたのことね








炎と燃え盛る
私のこの愛
あなたにだけはわかってほしい
謎めく霧も晴れてゆく








次元はただ夕暮れを浴びながら、イヴの歌声とペルメルに心を癒されていた。



ルパンと五ェ門も離れた場所でそれを静かに聞いていた。



next...





■あとがき
逃走編楽しかったー!イヴの意外な一面。ハンドル握ると暴走。こち亀の本多じゃねーか!(笑)今気付いた!
ラストでイヴが歌った「炎のたからもの」。「カリオストロの城」や「GREEAN VS RED」でお馴染みですね!ブログでイヴの声優を決めるとしたら水樹奈々がいいな〜なんて書いたんですが、上記の「炎のたからもの」は水樹奈々が歌ってると思ってください(笑)


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