01










2004年。アメリカ、米軍基地のある一室で兵士が上官に報告していた。上官の持つ資料には『新人傭兵基礎訓練結果』とあった。

「…この男」
「はっ、基礎訓練において銃撃・狙撃がトップの次元大介、日本人です」
「………」

上官はしばらく資料を眺めていたが、ふと窓から外をのぞいた。外では次元大介がひとり、射撃訓練をしている。

「………面白いな」



































2009年、イギリスのロンドン。夜闇の中の大英博物館。世界的に有名なこの博物館には世界中のあらゆる美術品が展示してある。その大半は戦利品といわれているが。

「…次元、おい次元」
「……あ?なんだ」
「どったの?すっごい真面目な顔してそれでいてボーッとしちゃって」

大英博物館に忍び込んだルパンと次元。お目当てはエジプトからの戦利品である古代ファラオの棺である。勿論、警備は万全だが先程催眠ガスで眠らせておいた。

「いや…なんでもねぇよ。昔のこと思い出してな」
「センチメンタルなの、次元ちゃん?昔の彼女ー?」
「お前と一緒にすんな」

そう言いながらも、ルパンは目的の棺を発見する。だが、棺は超強化ガラスによって守られていた。それでも余裕なルパン。

「あらら、超強化ガラス。先生、ひとっ斬りよろしくぅ〜!!」

ルパンがそう言うと、後ろから現れたのは五ェ門。彼の握る斬鉄剣は月明かりを浴びて輝いている。

「合い解った。てやあぁぁっ!!」

掛け声と共に斬鉄剣は一瞬にして超強化ガラスを切り刻む。さすがは十三代目石川五ェ門。

「さあっすが五ェ門ちゃぁん!ヌフフフフ、これがお宝ちゃんかぁ〜」

黄金に輝く棺がルパン達の目の前にある。ルパンはにやつきが止まらない。よっこらせ、と棺にロープを通して荷台に乗せる。

「ルパン、さっさとずらかろうぜ」
「慌てなさんな、次元ちゃん。警備員も警察も今はぐっすりよ」

ニシシ、と笑うルパンにため息をつく次元。








その時、五ェ門が何かの気配を感じて斬鉄剣の鞘を抜いた。

「「!」」

ルパンと次元もまた、物陰に隠れてワルサーとマグナムを抜く。明らかに自分達への殺気。

(数は一人…)
(宝を狙う野郎かよ)

殺し屋の類いだろう、と二人は思った。そして月の当たらない暗闇の中に見えたのは…














白いボディのオートマチック。













(キンバーカスタム!!)

次元が思ったのも束の間、キンバーカスタムから銃弾が放たれる。それは次元が隠れていた柱に命中する。

「っ…!!」

なかなか腕の立つ殺し屋らしい。ルパンや次元も撃つが、相手は暗闇に身を隠しているため標的が定まらない。

「畜生、野郎め…!すばしっこい!」
「ここはいっちょ…」

ルパンがにやりと笑った瞬間、五ェ門の刃が博物館の柱や壁を斬った。






「でやああああっ!!!」






それにより、今まで暗闇に隠れていた殺し屋の姿が月明かりに照らされた。そこにはキンバーカスタムを手にする黒ずくめの殺し屋。真っ黒で不気味なマスクをし、黒のコートを羽織った男だ。

「よーし、やっと姿を見せたな。あんたもこの宝が欲しいのか?」
「……」

ルパンの問いにも答えない男。次元はわずかな違和感を感じた。

(こいつ…前にも…)








その瞬間。












「ルパーン!!!逮捕だぁぁぁ!!!」








そこには多くの警官を引き連れ、手錠を掲げながら猛スピードで走ってくる銭形警部が。

「げっ!?とっつぁんだ!!!」
「おいルパン!睡眠ガス撒いたんじゃねえのかよ!!」
「持続性が薄かったみてえだなあ〜……よーし、逃げるぞォ!!!」

走り出したルパンを追う次元と五ェ門。次元がふと先程の男がいた場所を見ると、そこには既に誰もいなかった。

















/





















「んー、該当者無し。んな黒ずくめの殺し屋なんて山ほどいるっしょー!!!」

アジトのパソコンをいじりながら叫ぶルパン。お宝は手に入れたが、あの殺し屋が気になり調べてみるが該当者がいない。いても、別の人物。手がかりは黒ずくめの殺し屋ということと、愛用の銃がキンバーカスタムということだけだ。

「奴はまた現れるぜ」
「なんでわかるのよ、次元ちゃん」
「勘だ」
「おーおー勘ですかー」

ルパンははぁ、とため息をつく。

「ありゃあ、雇われてる奴だな。昔の俺と似てる。おおかた、どっかの組織が金で雇ってんだろう」
「なるほどねぇー…でまたまた現れちゃうと。」

謎めいた殺し屋。その正体は未だわからない。

「奴の目的は宝の奪取か…」
「それと、俺達の抹殺だな」

ルパンがパソコンの電源を消したその時。













ガサ…






「!!!」

扉の外から聞こえた物音。三人は素早く武器を手にし、物陰に隠れた。

「早速おいでなすった」
「チッ…」
「五ェ門、頼まれてくんねーか?」
「ん?」














しばらくして、ドアが爆音と共に破壊される。そこにはやはり、例のマスクの殺し屋がいた。人の顔を模した不気味なマスクは室内を見渡し、ルパン達を探している。

「ここだぜぇ、殺し屋さんよぉ」

声のした方に銃を向ける殺し屋。ルパンは平然とソファに座っていた。

「待ってたぜぇ、色々聞きたいことがあるんだ」
「……」
「俺達を殺すよう言った黒幕は誰なんだ?」

余裕そうなルパンと、黙秘を続ける殺し屋。

「あらら、だんまり?シャイなのね〜」
「…っ!」

その言葉に殺し屋が怒りを感じ、キンバーカスタムの引き金を引こうとした。その瞬間、バキューンと発砲音が響き、殺し屋の手からカスタムが弾け落ちる。

「さっすが次元ちゃぁーん!」

うるさいルパンは無視する次元のマグナムからは煙が上がっていた。さらに、天井に潜んでいた五ェ門が頭上から殺し屋に斬りかかった。つまり、ルパンは囮だったのである。

「でやああああっ!!!」
「!」

まるで風の如く。五ェ門と殺し屋の動きは速い。

「やったか!?」

次元が目を凝らす。

(仕留めきれなかった!皮一枚で逃したかっ!!)

五ェ門は気付いていた。殺し屋が斬鉄剣の軌道からわずかに外れ、軽傷で済んでいたことに。衣服と皮膚を軽く斬っただけ。殺し屋は腹部を押さえ、間合いをとった。







その姿に






三人は目を見開いた。







その殺し屋の衣服が大きく斬られ、黒の下着に包まれた豊満な胸が露になっていたからだ。

「え、え、ウソォ〜〜〜!!!」
「おなご…!?」
「……!」

ルパンや五ェ門が信じられないといったような衝撃を受けている中、次元は何か別の感情を抱いていた。

(まさか…)

遠い昔の記憶のはずだった。一方、殺し屋は腹部の傷が痛むのか、膝をついたまま不気味なマスクでこちらを見ている。その体はまさに若い女だった。

「ど、どうしよっかぁ〜…俺様、女の子をいたぶる趣味は無いよ?」
「…う、うむ…」
「………ルパン、五ェ門。ちょっといいか」
「どったの、次元ちゃん」

次元はそっと呟くように言った。





















イヴ

















その言葉に殺し屋が反応した。次元はさらに続ける。

「イヴなんだろ。身のこなし…戦闘経験…何よりそのキンバーカスタム。


女でそれが当てはまるのはお前しかいねぇよな

確信の言葉だった。すると、殺し屋は次元を見上げる。右手は未だ血を流し続ける腹部を押さえ、左手でそっとマスクに手をかけた。


















「…次元…」












その下にはマスクの不気味さとは似ても似つかない白い肌に青のオッドアイ、黒いボブヘアーの美女がいた。

「うっひょ〜!!!かわいこちゃぁ〜ん!!!」

異様なテンションで喜ぶルパン。

「次元ちゃん、お知り合いなの〜!?」
「ああ、死んだと思ってたがな。こいつはイヴ・メイフィールド。元米軍特殊部隊隊長の大佐だった女だ

イヴはただバツが悪そうに目をそらした。



next...





■あとがき
始まりました、ルパン三世連載。おわかりのようにTVスペシャル意識してます。サブタイトルのところでオープニング〜的な感じ(笑)
ヒロインのイヴ(デフォルト名)の夢絵はすでにイラスト置き場でいくつかupしてありますので皆さんチラ見してくださいな。


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